ターニャ・レイノルズ、女性の権利は無視されている
Netflixで大ヒットを記録しているドラマ『セックス・エデュケーション』は、“人間関係として”のセックスや性を描き、高い評価を得ている。劇中では、それぞれの性の悩みや身体の悩み、さらに様々な世代の人間関係の悩みが取り上げられ、もっと前に知りたかったという声も多い。
そんな本作で、確固とした自分の世界観を持つ個性的なキャラクターとして存在感を放つリリーを演じるのは、ターニャ・レイノルズ。劇中では、社会の価値観にそこまで縛られておらず自由な印象が強いリリーだけれど、ターニャ自身は、多くの少女たちが経験するように、中学生頃から自分自身の外見に自信が無くなっていったという。
しかし、俳優という、自分らしくいられる仕事をしたり、理想的とされた写真が広がるSNSと距離を置いたりして、社会によって隠されている自分たちの本当の“普通”を意識しているというターニャは、英Vogueのインタビューで、社会全体によって作り出されている多くの女性蔑視についてこう分析する。
「私たちの社会がずっと、これは恥ずかしいものだというたくさんの考えを女性の身体に植えつけて、女性の性的欲求や女性の(妊娠・出産に関する)リプロダクティブ・ヘルスを無視してきたなかで、社会全体の考え方を新しいものにするためには本当に長い時間がかかる。世界が物事に対して違う見方ができるようになるまでには長い時間がかかる」
ターニャ・レイノルズ、シスターフッドに希望
女性の身体や権利についての価値観が勝手に決められている社会では、女性でもその価値観に染まっている時や、女性と女性が対立させられている場合も多い。しかし社会が変わってきたことで、女性の対立は減ってきている。
例えば、シンガーのマライア・キャリーは、仲の良かったホイットニー・ヒューストンと自分が対立しているかのようにメディアで扱われたことを振り返り、「もっとも変わらなければいけないのは、女性たちを対抗させようとするのを止めること」としている。
また、俳優のケイト・ブランシェットは、「女性たちは長すぎる期間、分断されてきた」としたうえで、MeToo運動によってその隔たりが狭くなってきていることを喜んだ。そしてターニャもその点に希望を感じていると話し、女性の身体についてとやかく言われたくないと締めくくった。
「自分たちや、お互いに厳しい目を向けなくなり、みんながそれで良いってなってきていることに、希望を感じる。私たち女性の身体に関しては、私たちのことは放っておいて」
女性の身体について女性自身に決定権がない
女性の身体はこうあるべきだ、こうすべきだ、と決めてきたのは誰だろうか?
2019年にアメリカのアラバマ州で、レイプされて妊娠した場合でも中絶を禁止する法案が可決され、賛成票を投じたのは25名全員が男性だった。
また、『セックス・エデュケーション』でも描かれたように、イギリスで中絶は、国民保健サービスに登録していれば誰でも無料で、手動真空吸引法(※1)か経口中絶薬(※2)による中絶が行なわれている。一方、日本で行なわれている中絶方法の主流である掻爬(そうは)法(※)は、世界保健機関(WHO)が「時代遅れの外科的中絶方法であり、真空吸引法または薬剤による中絶方法に切り替えるべき」と勧告しているもので、WHOの必須医薬品に指定されている経口中絶薬は、日本では認可すらされていない。
※1:鋭的な器具は使用せず、子宮内を真空状態にして吸引する方法。合併症のリスクが少なく、静脈麻酔ではなく局所麻酔で行うことができる。
※2:従来の手術よりも安全性が高い方法。
そして日本では、勃起不全治療薬のバイアグラは申請から承認までたったの半年で認可された。一方で低用量ピルは、なんと、開発から承認まで数十年かかっている。認可されたのも、バイアグラの超高速認可の一方で、低用量ピルが認可されていないことへの批判が高まったため。
また、映像における女性の描き方にも声をあげている俳優は多く、女性の性的関心も描いたドラマ『ワン・トゥリー・ヒル』で、上層部に男性しかいなかったことについて、出演者のヒラリー・バートンは「かなり不快」だったとし、「女性のボスとやり直したい」とコメントしている。
女性の身体について、女性に選択肢が許されていない。決定権がない。そこには、社会のなかで決定権を持つ立場にいる人々に女性が少ないことや、女性の権利を考えない人々が多いことが理由の1つにあげられる。
俳優のミシェル・ウィリアムズは、第77回ゴールデン・グローブ賞の受賞スピーチで、「女性のみなさん。投票をするときは、自分の利益のために投票してください。男性は長年そうしてきました。だからこそ、世の中の多くの物事は彼らを表しているのです。しかし、私たちがこの国最大の投票層であることを忘れないでください。もっと私たちを表す世の中にしましょう」と、力強いメッセージを送った。(フロントロウ編集部)