ヒラリー・バートンが抱える悔しさ
2003年から2012年まで放送されたドラマ『ワン・トゥリー・ヒル』は、恋愛や友情、家族愛などを、9年にわたって濃密に描いた大ヒットシリーズである一方で、制作現場では上層部からの性的嫌がらせが横行していたことも告発されている。
そんな『ワン・トゥリー・ヒル』だけれど、ある思春期の心理学の教科書に一例として取り上げられているそうで、1人のファンが、同作のメインキャラクターの1人であるペイトン・ソーヤーを演じたヒラリー・バートンにツイッターで報告したところ、ヒラリーが、ドラマの制作現場を振り返って苦言を呈するという出来事があった。
「これは恥ずかしい。10代の少女たちの性的関心は、『ワン・トゥリー・ヒル』のベースとなるものだった。だからこそ、決定権を持つ立場に女性が1人もいなかったことは、私にとってはかなり不快。私たちのために主張してくれる人はいなかった。男性たちが少女たちの性的関心を語るなんて、赤信号でしょう。女性のボスとやり直したい」
Embarrassed by this.
— Hilarie Burton Morgan (@HilarieBurton) March 4, 2021
Teen girl sexuality was a cornerstone of #oth, so its gross to me that there were no women in positions of power there. No one we could turn to to advocate for us.
Men telling the stories of girl sexuality is a red flag.
I want a do-over with a girl boss. https://t.co/dNChoypcC1
女性の感情を男性が描くことで女性のリアルな感情が描かれなかったり、男性に都合の良いものになったりすることがあるのは、度々問題となっている。
『ワン・トゥリー・ヒル』にも同様の問題があったとするヒラリーは、夫で俳優のジェフリー・ディーン・モーガンとともに1人の息子と1人の娘を育てており、複数回の流産を経験したことも明かしている。
エンターテイメント業界に身を置く1人の女性として流産を経験したことは、さらに困難がともなうものだったと自叙伝で綴っている彼女は、だからこそ、その思いを発表することにしたと語っており、女性としての経験を率直に発信してきた。
そんな彼女にとって、女性の感情を描く時に、意思決定の場に女性が1人もいなかったことは、今でも悔しさと後悔を感じるものであることは、簡単に理解できる。
ヒラリー・バートンとジェフリー・ディーン・モーガン。
女性キャストやスタッフが告発してきた現場
『ワン・トゥリー・ヒル』の視聴者には、10代の少女たちも多かった。だからこそ、より一層、そのなかで女性メインキャラクターたちがどう描かれるかは、その影響力からも重要な問題になってくる。
ブルック・デーヴィスを演じたソフィア・ブッシュも、ヒラリーと同様に、上層部に問題があったと指摘したことがある。彼女が明かした内容はさらに過激で、自分が下着姿のシーンが多いことに意見した時に、「君こそが、みんなが見たがる大きな胸を持っている1人じゃないか」と、あからさまに性的嫌がらせ発言をされた経験があるという。
しかしソフィアが闘い続けた理由は、自分の身を守るためだけでなく、視聴者の若い少女たちへの影響を考えてのことだったそう。当時ソフィアが抱えていた信念は、このようなものだったという。
「私はこれはやらない。これは不適切。私たちは(ドラマを見ている)16歳の少女たちに、こんな行動や、こんな方法で評価されようとすることを教えるべきじゃない」
『ワン・トゥリー・ヒル』をめぐっては、番組終了から5年後の2017年に、同作の脚本家であるオードリー・ウォチョップがプロデューサーのマーク・シュワーンを性的いやがらせで告発した。さらにその後、キャストやスタッフなど総勢18名がオードリーを擁護し、彼のセクハラによって心的外傷後ストレス障害の治療を受けている女性もいることが明かされている。(フロントロウ編集部)