多くのファンに愛される『ブラックパンサー』
2018年に公開されたMCU映画『ブラックパンサー』は、マーベル映画史上初めて黒人のヒーローを主人公にした作品。多くのファンから高い評価を受けた本作は、アカデミー賞で史上初のアメコミ映画かつスーパーヒーロー映画として作品賞にノミネートされた。
そんな伝説的な作品で主人公ティ・チャラ/ブラックパンサーを演じた俳優のチャドウィック・ボーズマンは、2020年8月、大腸がんにより突然この世を去った。約4年にわたり自身の病を隠してきたチャドウィックは、死の一週間前まで、続編映画『ブラックパンサー2』に出演しようとしていたという。
その後、映画『ブラックパンサー2』はチャドウィックなしで撮影が進められることが決定。『ブラックパンサー』で監督を務めたライアン・クーグラーが引き続き監督を担当することになった。
『ブラックパンサー』監督の苦悩
クーグラー監督も、チャドウィックの病を知らなかったという。彼は訃報を受けた直後米Wrapに「これほどまでに激しい喪失感に襲われたことはありませんでした。過去1年間、私は彼が言うであろう言葉を想像して書き上げていました。結果的に私たちは見ることはできなくなってしまいましたが。もう二度とモニターで彼のアップを見ることはできないし、彼に近づいて別のテイクを頼むこともできないと思うと、心が折れそうになります」とコメント。その悲しみの深さを告白した。
そんなクーグラー監督は、現在進められている『ブラックパンサー2』の制作にあたって抱えている苦悩をポッドキャスト『JemeleHill is Unbothered』で明かした。
彼は、「この地球での短い、あるいは長い時間の中で学んだことのひとつは、どう頑張っても、実際にそれを経験しているときは違う視点からそれを見るのは難しい、ということです。これは私の人生の中でも最も重大なプロジェクトの一つです。ある特定の人物を失った状態でこのプロジェクトを継続させなければなりませんから。プロジェクトのカナメだった人をね」と言った。
そして、「とはいえ、自分には個人的な生活もあれば、仕事上の生活もあり、プライベートな生活もあります。好きなことを仕事にしていると、それらが混ざり合って一つになるでしょ?人生の大半は仕事になるのです。ですから、私はワークライフバランスを取るよう頑張っています。それぞれ独立した2つのものを作ろうと取り組んでいるのです。まだまだですがね。しかし、疑いようもなく、これは私の仕事人としての人生で最も困難なことです」と、自身の感情と向き合いながら『ブラックパンサー2』を作ることへの苦悩を明らかにした。
チャドウィックを失った悲しみを抱えながらも、多くのファンの期待を背負う『ブラックパンサー2』の制作も続けなければならないというのは非常に心の負担が大きいはず。クーグラー監督はそんな状況の中でも、ティ・チャラの意思を受け継ぐ作品の制作を進めている。(フロントロウ編集部)