映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』がオリジナル脚本賞
現地時間3月21日、アメリカで全米脚本家組合賞(Writers Guild Awards)が開催された。2021年4月25日に開催されるアカデミー賞の前哨戦の一つとも言われるこの賞は、その名が指す通り、組合に所属している脚本家の投票によって選ばれる。
今年のオリジナル脚本賞に選ばれたのは、エメラルド・フェネルが監督、脚本、制作を務めたパワフルなフェミニズム映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』。フェネル監督は受賞インタビューで「同じ部屋で皆さんと直接お会いできればいいのですが。今は、イギリスの暗いライターズルームからお礼を言わなければなりません」と、新型コロナ禍でリモート開催となったことに言及しつつ、喜びを語った。
映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』はキャリー・マリガン主演で、有害な男性に鉄槌を下していくというストーリー。その強烈な内容は様々な議論を呼びおこし、女性差別について改めて考えさせられるきっかけづくりにも役立っている。このように有意義なフェミニズム映画が、脚本家組合の最高賞を受賞することは非常に興味深い。
大好評『続・ボラット』も好評
脚色賞に選ばれたのは、大ヒットを記録したモキュメンタリーコメディ映画『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』。本作は、2006年に公開された『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』の続編で、ゴールデン・グローブ賞ミュージカル・コメディ部門の作品賞を受賞している。
脚色賞を受賞した主演&脚本家のサシャ・バロン・コーエンは、「脚本家組合の60%の人がこの映画に携わったからこそ、我々が受賞できたのだと思わずにはいられません」とジョーク交じりに語った。
さらに、「このような映画を書くのは非常に難しいことです。その理由のひとつは、行動がまったく予測できない実在の人物が主役だからです。もちろん、ルディ・ジュリアーニは別ですが、彼は私たちが期待していた通りの活躍をしてくれました」(※)とコメント。
※本作はフィクションをまるでドキュメンタリーのように撮る手法の「モキュメンタリー」で作られている。一方、作中に登場するルディ・ジュリアーニはドナルド・トランプ元米大統領の弁護士で、無許可で撮影されている。
他の映画祭で受賞&ノミネートされている作品はノミネートされず
2021年の映画祭界隈を賑わせている作品といえば、アメリカ移民一家を描いた映画『ミナリ』や、アンソニー・ホプキンス主演で老いをテーマにした映画『ファーザー』、現代の遊牧民の姿を描いたクロエ・ジャオ監督の『ノマドランド』など。しかしこれらの作品は全米脚本家組合賞のノミネート対象ではなかった。
また、全米脚本家組合賞のドキュメンタリー部門のノミネート作品は、一つもアカデミー賞のドキュメンタリー部門にノミネートされていない。ちなみに本年度の全米脚本家組合賞ドキュメンタリー賞を受賞したのは、『The Dissident』。
このように、他の映画祭とのノミネーションの差異があるところも今年の全米脚本家組合賞の面白味の一つ。
『ザ・クラウン』の脚本家、大絶賛にもかかわらず…
テレビ部門では、ドラマシリーズ賞に『ザ・クラウン』が選ばれた。脚本家のピーター・モーガンは5人の子供たちと視聴者に感謝しつつ、「父親の仕事に少しでも興味を示している人は1人もいません」と、大絶賛にもかかわらず、自慢の子供たちにはそれほど響いていないということを告白。
また、コメディシリーズ賞と新シリーズ賞にはAppleTV+のジェイソン・サイキダス主演ドラマ『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』が選ばれ、共同制作者であるビル・ローレンスは他のノミネーション作品に対し「あなた方が負けたことは悲しいが、我々が勝ったことは嬉しい」とコメント。一瞬の沈黙ののち、「そういうものなのでしょうか?」という言葉で締め括った。(フロントロウ編集部)