シャロン・ストーンが生きたミソジニー
『氷の微笑』や『トータル・リコール』で知られるシャロン・ストーンは、数十年にわたってハリウッドで活躍してきた。それはつまり、2017年にMeToo運動が起こり、女性に対する性加害や差別に声があがる前のハリウッドを何十年と生き抜いてきたということを意味する。
シャロンは、自身が経験した差別についてたびたび明かしており、2020年にはドイツ版Vogueで、「20年前は、それはそれはミソジニーな時代でしたよ。私より3歳年上のメル・ギブソンは、私は彼の相手役には年を取り過ぎていると思っていましたから」と話している。
シャロン・ストーンが受けた“アドバイス”
しかし彼女は、他にも多くの女性蔑視を経験していた。自叙伝『The Beauty of Living Twice(原題)』のなかでシャロンは、あるプロデューサーのオフィスに呼び出され、共演者と寝るよう言われた過去を振り返った。
プロデューサーは彼女に、そうすれば「スクリーン上で良い化学反応」が起こると言ったという。
「演技のテストをしても全く良くなかったのに、この男性俳優が良いと言い張って…、そして今、もし私が彼とセックスしたら彼は良い俳優になると思うわけ?ベッドでそんなに上手い人はいないでしょう。私は当時、別の才能がある俳優を雇うことができたと感じた。演技力があり、セリフを覚えている誰かを。あと、彼ら自身が彼とセックスして、私のことを放っておくことだって出来たとも思った」
なぜその男性俳優でなくてはいけないのか、そうだとしてもなぜ自分が彼のために体を使わなくてはいけないのか。シャロンはその当然の思いをプロデューサーに言ったそう。すると、女性が行動を起こしたり権利を主張したりしたときに貼られがちなレッテルである“難しい女”と考えられるようになったという。
さらにシャロンによると、その共演者はその後数週間、彼女に言い寄ってきたそう。また、共演者と寝るように言ってきたプロデューサーは、他にも多くいたことを明かした。
そのなかでも彼女は、自分を傷つけるような選択はしなかった。その大切な意思を持つ一方で、「人々が私を批判して、男性が私に怖がっていたと言う。それには、泣きたくなる」と話すシャロンは、過去の多くの撮影現場ではメイクやヘアのスタッフすらも男性で、自分は現場にいるたった1人の女性であることも少なくなかったと振り返り、「撮影現場にいるたった1人の女性、たった1人の裸の女性であることがどんな感じか想像できる?なのに、私が怖がらせていた側だと言われている」と、苦しい思いを綴っている。
しかし、シャロンたちが切り開いてきた道は、現在に続いている。
シャロンの次の世代である俳優のケイト・ブランシェットは過去に、現在の社会について、「裏方にもかなり多くの女性が増えてきているのが分かります。それは素晴らしいことです。そしてそれは映画業界にかぎったことではないでしょう。女性は、過去に直面したバリアや困難、そして失敗の瞬間についてますますオープンになっています」と語り、「私達は進み続けなければなりません」と語っていた。(フロントロウ編集部)