ヴィクティム・ブレーミング/被害者非難とは?
4月3日は、「ヴィクティム・ブレーミングに反対する国際デー/International Day against Victim Blaming」。
被害者非難という意味のヴィクティム・ブレーミングは、文字通り、加害者でなく被害者を責めるもの。なかでも、性暴力に遭った女性に対して非難が起こることが多いため、性犯罪の話において使われることが多い。また、レイプ被害者に対するヴィクティム・ブレーミングは、セカンドレイプの1つでもある。
ヴィクティム・ブレーミングは“よくあること”
ストリートハラスメント、ストーカー、性的嫌がらせ、性的暴行など、性的被害の種類は数多くある。
親や親戚から、顔見知りから、男友達から、見知らぬ人から、道で声をかけられたり、むやみに身体に触れられたり、体型についてコメントされたり、そしてレイプされたり…。そのうちのどれか一つ、またはその多くを、ほとんどの女性がされたことがある社会というだけでもおかしいことなのに、さらに、その被害を明かした被害者が責められることは多いというのが現状。
アンラッキーだったね、嘘でしょ、気にしすぎ、そんな服を着ていたからだ、そんな場所にいたからだ、態度が誘っているようだったんだ。近くで、またはメディアやSNS上でそんな声をかけたことがある人、かけられている被害者を見たことがある人は多いはず。
しかし、なぜ被害者を責めるのか?
犯罪を行なったのは加害者であることは事実。男性であればどのような服装をしていても、夜に道を歩いていたからといっても、責められることはないのに。
ヴィクティム・ブレーミングを止めるには
ヴィクティム・ブレーミングをするのは、なにも男性だけではない。女性がすることもあれば、被害者の家族すらすることもある。
その社会の現状は、UN Womenのプムズィレ・ムランボ=ヌクカ事務局長が、「多くの国の女性が、信じてもらえるよりも自分が責められることの方が圧倒的に多いとわかっています」と指摘している。
ヴィクティム・ブレーミングが起きている、私たちが生きるこの社会はどのような社会なのだろうか? そこには、“レイプカルチャー”がある。アメリカのサザン・コネチカット州立大学は、現在の社会におけるレイプカルチャーをこう説明している。
「レイプカルチャーとは、レイプがよく起こり、性暴力が普通のこととされ、メディアやポップカルチャーの中で(責任を取ることを)免除されている環境のことです。ミソジニー(女性嫌悪)的な言葉を使用すること、女性の身体を性的モノ化すること、性暴力を美化することでレイプカルチャーは受け継がれており、それによって女性の権利と安全を軽視する社会が作り上げられています」
ヴィクティム・ブレーミングをする人には、反射的にしている人もいる。そこには、私たちが生きている社会が根本的に偏っていることも原因にある。自分がどんな社会に生きているのか、どんな社会の価値観に影響されているのかを認識することは重要。
団結すれば変化は生まれる!
ヴィクティム・ブレーミングが深刻な問題となる一方で、被害者のために声をあげる人も増えている。
俳優のブリー・ラーソンは、MeToo運動のきっかけとなったハーヴェイ・ワインスタインへの告発が出た際に、告発者たちに向けて「私はあなたを信じます」とメッセージを送り、シンガーのレディー・ガガは、過去にコラボしたR&BシンガーのR.ケリーによる数々の性的虐待が告発された時に、「私はこの女性たちを1000%支持する。彼女たちを信じる」とコメントした。
また、女性たちが、様々な性被害を共有しあうハッシュタグも多く誕生している。
女性が受けた性暴力の問題については、すべての男性が犯罪者ではないという反発が起きることが多いけれど、それに対して、すべての男性がそうではなくても、すべての女性が性暴力に遭ったことがあるとする「Not All Men But All Women」というハッシュタグが生まれ、多くの女性が自分の経験を共有した。
「Why I Didn’t Report(私がなぜ通報しなかったか)」というハッシュタグでは、性犯罪に遭った人がなぜ通報しなかったかについての思いを共有。逆に責められた、信じてもらえなかった、などといった思いが書き込まれた。
また、被害者をサポートし、声をあげるために、思いを語れる言葉を知ることはとても重要。幼少期にレイプ事件を目撃したことがあるという俳優のダナイ・グリラは、被害に遭った女性に対するヴィクティム・ブレーミングも目撃することになり、こんな怒りと悔しさを経験したと明かす。
「彼女(被害者)に対する評価や彼女がおかれた状況、そして暴行そのものや、なぜか彼女が非難されるということが、どれだけアンフェアであるかを訴える言葉を自分が持っていなかったことにも激怒しました。彼女のために立ち上がり、どれだけ性暴力が間違ったことだったかと叫ぶための言葉を、私は持っていなかった」
加害者に加担するヴィクティム・ブレーミングを、自分はやってないと思っていても実際には行なっている人はいれば、自分はヴィクティム・ブレーミングをしないからと言って、その問題を解決することについては気にしない人もいる。まずはそれについて考え、そして被害者をサポートしていくことが重要。(フロントロウ編集部)