アカデミー賞直前、最後の大勝負インディペンデント・スピリット
インディペンデント・スピリット賞(Independent Spirit Awards)は、ハリウッドのメジャーなスタジオではなく、独立系資本で映画制作に携わる人々を支援する目的で設立された映画賞。授賞式はアカデミー賞の前日に行なわれ、毎年大きな関心が寄せられる。今年は新型コロナウイルスのパンデミックにより延期となったアカデミー賞の3日前のゴールデンタイムに全米放送された。
第36回目となった2021年は、クロエ・ジャオ監督の映画『ノマドランド』が最優秀賞である作品賞をはじめ、監督賞、編集賞、撮影賞の4つの部門を受賞。同作は2021年のアワードで最も注目されている作品の一つで、これまでにゴールデン・グローブ賞、英国アカデミー賞、放送映画批評家協会賞をはじめとする、数々の映画祭で最高賞を受賞している。
ジャオ監督は「好きなことを仕事にできるのは本当に幸運なことです。賞にノミネートしたことによって、私のような人がもっと夢を実現できるようになるのであれば、素晴らしいことだと思います」と受賞後のインタビューで語り、その名が示す通り「インディペンデント・スピリット」に溢れた独立系作品も選ばれるこの賞で最高賞を受賞したことへの喜びを示した。
『ノマドランド』は、毎年のアカデミー賞受賞者を予想する米映画情報サイトGold Derbyでも高い評価を得ており、作品賞や監督賞、脚本賞などの主要な賞を受賞するのではないかと言われている。
『I may destroy you』が初のテレビ賞を受賞
2021年のインディペンデント・スピリット賞では、テレビ作品からも作品が選ばれるという初の試みが行なわれた。そんなテレビ部門の最優秀賞を受賞したのは、HBO制作の『I may destroy you』。
ロンドンに住む黒人女性がレイプを受けたトラウマに苦しむ姿を克明に描くドラマ『I may destroy you』は、批評家や視聴者から非常に高い評価を受けている作品で、主演を務めたミカエラ・コールは受賞スピーチで「私が想像もしなかったような方法でキャラクターに命を吹き込んでくれた素晴らしく謙虚なキャストたちからは、励ましとサポートしか感じられませんでした」と、喜びのコメントをした。
俳優賞では、『サウンド・オブ・メタル』が2冠
主演男優賞に選ばれたのは、Amazonプライム・ビデオで配信されている映画『サウンド・オブ・メタル -聞こえるということ-』のリズ・アーメッド。また、本作からはポール・レイシーが最優秀助演男優賞に選ばれた。また、同作品は監督とプロデューサーに授与される「BEST FIRST FEATURE」も受賞。
主演女優賞に選ばれたのは、『プロミシング・ヤング・ウーマン』で迫真の演技を見せたキャリー・マリガン。監督のエメラルド・フェネルは脚本賞に選ばれ、オスカーでの脚本賞も見えてきた。
助演女優賞に選ばれたのは、映画『ミナリ』のユン・ヨジョン。ユンはアカデミー賞予想サイトGold Derbyでも助演女優賞の予想第1位で、これまでに英国アカデミー賞、SAGアワード、Critics' Choice Awardなど、オスカー前哨戦として有力な賞を多数受賞している。
いよいよ、第93回アカデミー賞授賞式は日本時間4月26日に開催される。(フロントロウ編集部)