セクハラ・性的暴力根絶へ 新プラットフォームの運用がスタート
「#Me Too」や「#Time’sUp」といったスローガンを掲げたセクハラ撲滅運動が本格的に活性化してから約3年。全米映画俳優組合(SAG-AFTRA/The Screen Actors Guild - American Federation of Television and Radio Artists)が、ハリウッド映画やドラマの制作・オーディション現場などにおけるセクハラや性的暴行の被害の報告をより容易で身近なものとする目的で、米現地時間の4月29日より、「セーフ・プレイス(Safe Place)」と呼ばれる新デジタルプラットフォームの運用を開始した。
その名の通り、俳優たちが安心して働くためにより“安全な場所”を提供することを意図して導入されたこのシステムでは、スマホやタブレットにダウンロードして使うアプリ、もしくは、全米映画俳優組合の公式ウェブサイトに設置された専用ページから、通報を行なうことができる。
セクハラや性的暴行被害の通報の仕方には、①匿名による投稿 ②連絡先(実名)を示したうえでの通報+組合による介入を希望 ③連絡先を示したうえでの通報+通報者側の準備が整うまでは組合は介入せずに待機するという3通りの方法が用意されており、被害を受けた組合のメンバーにくわえて、問題行為を目撃した第三者も通報を行なうことができる。
通報はセクハラや性的暴行被害に関するトラウマのスペシャリストたちで結成された公正・包括チームによって取り扱われ、通報者や被害者にとってどういったアクションを取るのが最適かというカウンセリングを行ない、然るべきリソースを供給してくれるという。
さらに、SAG-AFTRAは、複数の通報があった人物(加害者)に関しては、将来的にハリウッド・コミッションといった業界内のほかの団体ともデータを共有できるようにすることで、徹底してセクハラや性暴力を根絶しようと計画しているという。
インティマシー・コーディネーターの採用を強化
29日に行なわれた記者会見では、セーフ・プレイスの導入にくわえて、キスシーンやベッドシーンといった性的な描写を含むシーンに臨む俳優たちをサポートする専門家として、近年、映画やドラマの制作現場で指導を行なうケースが増えている「インティマシー・コーディネーター(Intimacy Coordinator)の採用や育成を今後さらに強化していくと発表。
SAG-AFTRAは2020年1月にインティマシー・コーディネーター制度を導入したが、現場では目に見えて改善が見られているといい、今後、より一層インティマシー・コーディネーターの人員数を増やすべく、専用のトレーニングプログラムをもうけるほか、コミュニティを構築し、情報共有するためにも年次学会を開催していくことをアナウンスした。
ハリウッドで働く俳優たちが、映画製作会社から不利な労働時間や休暇条件を強いられ、搾取的な多年契約を迫られていたことを受けて1933年に設立されたSAG。2012年にテレビやラジオの分野で働く人々の組合である米国テレビ/ラジオ芸能人連盟(American Federation of Television and Radio Artists)と合併してSAG-AFTRAとなり、さらなる労働条件・環境の改善に努めている。
今回の記者会見では、このほかにも、「ホテルの部屋や個人宅での不適切なプライベートミーティングの禁止」「俳優たちが性的なシーンや肌の露出を求められるシーンに関して、製作会社やプロデューサーとより強固な姿勢で交渉ができる権利の保証」「業界におけるハラスメントや暴力行為を防止するための行動規範の発行」なども提示された。(フロントロウ編集部)