“男は泣くな”に悩まされてきた男性たち
“男は泣くな”などの言葉に代表されるような、“男性なら強くあるべき”という、古くからある“男性像”を男性たちに押し付ける「トキシック・マスキュリニティ(有害な男らしさ)」は、男性たちに昔ながらの“男らしさ”にそぐわない行動を取ることを制限させ、男性たちを悩ませてきた。海外の研究では、この考えに沿って生きる男性ほど自殺率が高いという結果が出た。さらに、“女性をモノにしなくてはいけない”や“男は女性にリードされてはいけない”といった、女性にも悪影響が及ぶに考えが多いため、有害な男らしさは全員に悪影響がある負のサイクルだと近年は考えられている。
最近では、映画『バッドボーイズ』シリーズやシリーズや『メン・イン・ブラック』シリーズなどで知られる俳優のウィル・スミスが、脱力感のある「人生最悪」の体型を公開したことが話題になるなど、ボディポジティブの側面から“男性は筋骨隆々であるべき”のような考えをなくしていこうと発信する男性セレブたちが増えている。
ジョシュア・バセットが「トキシック・マスキュリニティ」についてコメント
今回、そんなセレブたちの声に新たに加わったのが、Disney+ (ディズニープラス)のドラマ『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』で主役のリッキーを演じている俳優でシンガーのジョシュア・バセット。
ジョシュアは「男の子たちは泣かない」とアコースティックで歌っている動画と共に、「トキシック・マスキュリニティ」というタイトルをつけた長文をインスタグラムに投稿。そのなかで、自身も「男の子は泣いてはいけない」のような言葉に悩まされてきたことを明かした上で、長きにわたって受け継がれてきた“有害な男らしさ”を終わらせなければいけないと力強く訴えた。
ジョシュアの投稿の日本語訳は以下の通り。
「僕や多くの人たちは、『男の子なら泣くな』と言われ、そう期待されてきた経験がある。一見すると、些細なものとして見過ごされてしまうけれど、これはかなり深い問題だと僕は思っている。
ほとんどの男性と同様、僕は泣いてはいけないと言われながら大人になってきた。僕は自分の『繊細な側面』を抑えることを余儀なくされたんだ。
問題なのは次のこと。子供の頃に感情を抑えることは、魂を傷つけ、生きたまま心を埋葬するようなものなんだ。僕はこれこそがトキシック・マスキュリティの根本にあると信じているし、今日の男性たちの多くの心に伝染していると思う。
子供の頃、僕は影響を受ける大人たちや友人たち(男性も女性も)からバカにされてきた。11歳の頃には、毎晩自分を責めていたよ。
『ああ、もう! 僕はまた今日も泣いたのか? 情けないよ! 弱虫のままじゃダメだ。もういい加減、成長しよう』っていう風にね。
今となっては、僕が自分の中に(感情を)押し込むようになってしまったのは、感情に対する他の人の知識不足が大きな原因だったということが分かる。彼らも幼少期にそういうことを経験したから、それを僕にも投影して、再利用したんだ。彼らの言葉が、僕の言葉にもなっていった。
ある時点で、僕は自分の『柔らかい』側面を完全に自分から切り離してしまった。僕は無情になって、泣きたいと思っても、泣くことができなくなったんだ。こういう経験をしたのは僕だけではないはず。そしてそれは、僕の人生における、あらゆる人たちとの関係に影響したんだ。
もし君が自分を抑えていたり、麻痺してしまっていたといても、自分を責めないでほしい。君はサイクルの一部になってしまっているんだ。長きにわたって世代間で受け継がれてきた、感情を持つことを止めてしまった男性たちのサイクルのね。僕らのほとんどは、自分の心を無視し、遠ざけるように教えられる。なかには、恐怖心や義務から、そうせざるをえなかった人たちもいる。(自分の感情に向き合うことは)僕らが持っている唯一の真実の繋がりなのに。
あまりに不健康で、傷つけるものだから、どこから始めればいいかすら僕には分からない。嫌になるくらいの長い道のりをかけて、意図的に捨て去るようにしてきた。僕は今も、自分に『感情を持つこと』を許すことを実践している(どんな人でも、愛や平和、受容を感じたいはずだけどね)。
男の子たちへ。どうか、自分の感情の健康状態を確かめる時間を設けてほしい。君自身のためにも、他の人たちのためにも。
トキシック・マスキュリティを君のところで終わらせるんだ。
君自身が責任を持ってほしい。
手遅れになってしまう前に、君の友人たちにも責任を持たせてほしい。
父親たちやブラザーたち、友人たちから受け継いできた道を捨てるための時間をとってほしい。
もし僕の言葉によって怒りを感じたり、守りに入ったりするような人がいたら、時間をとって、その理由を考えてみてほしい。
深い悲しみを苦しさや怒り、暴力に変えるのではなく、クリネックス(のティッシュ)をとって、涙で流してみるのはどうだろう? 自分のガードを下ろしてみるんだ。強がれる分だけ、弱くなれるんだよ。もう安心していいよ。
君や、君の母親、シスター、娘たち、そして未来の娘たちは、これを頼りにしている。行動しないままという生き方はいけないよ。僕らはこのサイクルを終わりにしなければいけない。絶対に終わらせるんだ。#CryingIsCool(泣くのはクールなこと)」
(フロントロウ編集部)