メンタルヘルスの基本となる「セルフケア」。他者とのポジティブな会話を通じて心のバランスを整えながら交流することに着目した音声系SNSアプリ『Quilt(キルト)』が海外で注目を集めている。(フロントロウ編集部)

他者との会話を通じてセルフケア
音声系SNSアプリ『Quilt』に熱視線

 パンデミックの影響により抑圧的でストレス過多な生活が続くなか、より一層その重要さが見直されることとなった「セルフケア」。文字通り、自分の心の健康を自分で守るために、さまざまな方法でメンタルヘルスのケアを行なうことを言うけれど、その手段には、ヨガやウォーキングなどの適度な運動やストレッチ、快適な睡眠への取り組み、瞑想、趣味を満喫すること、お笑い番組やコメディ映画を観て思いっきり笑うといったものがある。

画像: 他者との会話を通じてセルフケア 音声系SNSアプリ『Quilt』に熱視線

 そして、なかには、他人との会話を通じて、悩みや不安、漠然と考えていることを打ち明けること、もしくは興味があるトピックに関して誰かの考えを聞くことで心がスッと軽くなり、「また明日も頑張ろう」と決意を新たにできるという人も。

 そんな他者との会話に基づくセルフケアの場を提供してくれるのが、32歳の若き女性ファウンダー、アシュレイ・サムナーが設立した音声系SNSアプリの「Quilt(キルト)」。

 2017年にローンチされたQuiltは、もともとは、カリフォルニアの各地にある参加者たちの自宅をコワーキングスペース(※)として集い、コミュニティを築くという方式をとっていたが、2020年3月頃に深刻化した新型コロナウイルスの蔓延に伴い、対人での交流が困難に。

※異なる職業や仕事を持つ利用者たちがオフィス環境を共有し、交流できるスペース

 紆余曲折を経て、2021年1月にユーザーたちが音声のみでコミュニケーションを図るSNSアプリとして再スタートを切ったところ、匿名性がある程度守られる性質が好評となり、毎月ユーザー数が倍になっていくというハイペースで利用者を増やしている。


女性やマイノリティも安心して使える音声SNS

 音声系SNSと聞いて真っ先に思い浮かぶのが、日本でも2020年の年末から年始にかけて利用者が激増した「Clubhouse(クラブハウス)」だけれど、Quiltはこれとは似て非なるもの。

 Quiltは、Clubhouseのように招待制ではなく、誰でも無料で参加できて排他的な印象もない。

 Quiltへの参加条件の1つは、「エゴは捨てること」。利用者たちは、あくまでもセルフケアのために興味のある話題について会話をしたり、相談したりするため、よりポジティブで平和的な土壌が築かれている。

画像: 女性やマイノリティも安心して使える音声SNS

 Clubhouseに関しては、日本ではどハマりする人もいる一方で、「話したがりおじさん」、「声かけおじさん」、または「クラブハウスクラッシャー」と呼ばれる、マウンティングや独りよがりな行為におよぶユーザーが登場し、4月頃には人気が一旦沈静化。海外でも、ヘイトスピーチを広げる可能性にくわえて、男性スピーカーたちの独壇場となる傾向が強いなどネガティブな側面に批判が集まっている。

 2014年にジョージ・ワシントン大学の研究チームが発表したレポートでは、男性は会話の相手が女性だと、相手が男性の場合よりも33%も発言を妨げがちな傾向にあると発表されている。ノース・ウェスタン大学法学院は、2017年、「男性最高裁判事は、女性裁判官の発言を男性裁判官のおよそ3倍妨害する」という司法の現場における研究結果を報告している。

 既存のソーシャルスペースの大半において、女性である自分が「安全、もしくは除外されていないと感じることはできなかった」と語るサムナー氏がQuiltで目指したのは、気軽に顔を出し、臆することなく発言できて、安心感をもって属することができるコミュニティ。

 もちろん、ユーザーを女性だけに限定しているわけではなく、ノンバイナリー(※※)の人々や男性も大歓迎だが、大前提として「C」から始まる以下の4つのルールを示している。

※※女性または男性という2択の考えに当てはまらないジェンダーのこと。男性と女性の両方というジェンダー・アイデンティティを持つ人もいれば、そもそも自分にはジェンダーがないという人もいる

「Care」  他人を尊重し、寛容であること
「Collaboration」 コミュニティに属する人々と協力して成長すること
「Contribution」 自分についてオープンに語り、他者に理解と支援をオファーすること
「Curiosity」 コミュニティの人々の声に耳を傾け、学ぶこと

 米Todayによると、2021年4月時点でのQuiltユーザーの内訳は70%が女性、20%がノンバイナリー、10%が男性。55%が白人で45%が有色人種となっている。


Quiltの使い方

 Quiltの使い方は、アプリをダウンロードして起動したら、まず、表示されるトピックのなかから自分の興味があるものを3つ選ぶ。あとは、ユーザーネームを選び、プロフィールを制作したら参加準備は完了。自分がどう呼ばれたいかというプロナウン(代名詞)も設定する。

 ホームページには現在進行中の会話が表示されるので、面白そうなものがあれば参加を。1日あたり3つ「ウェルカムルーム」と呼ばれる“手ならし的”なルームが用意されているので、そこで質問をしてみるのもいいかもしれない。

 Quiltでは、会話のテーマは①スピリチュアル&個人的な成長(瞑想や占星術、ヒューマンデザインetc.)、 ②キャリア&人生における目標 、③恋愛、セックス、家族 と大きく3つのカテゴリに分けられており、話したいテーマごとに誰でもチャットルームを作成することができる。

 いきなり発言したり、会話の進行役を買って出るのは気が引けるという人に対して、サムナー氏は、まずは、とにかくアプリをたくさん使って、いろんな人の話を聞いてみて欲しいと米Bustleに話す。


友だちづくりにも

 コミュニティを広げて、気の合う人たちと交流するという意味合いでは、Quiltは女性主導の出会いを提供するマッチングアプリとして好評のBumble(バンブル)の友だち探し機能「BFF」に似ているとも言われる。

画像: 友だちづくりにも

 Quiltでは、同じセッションに参加していたユーザーのプロフィールを確認して「フレンド」として追加し、アプリ内で直接連絡を取り合うこともできる。もちろん、必要に応じて、望まない相手をブロックするという保護機能も備わっている。

 今のところ、QuiltはApple端末のみ(英語のみ)での運用。フロントロウ編集部で試したところ、現時点では日本国内からは使用できないよう。ただ、今後、アンドロイドでの使用も開始する予定でウェイティングリストが存在するというので、日本での展開拡大に期待したい。(フロントロウ編集部)

This article is a sponsored article by
''.