オリンピックで注目高まる、日本のLGBTQ+事情
ブラジルでのトランスジェンダーの人々の殺害、ポーランドでのLGBTフリーゾーンという差別、アメリカでのトランスジェンダーの学生のスポーツ参加議論、ケニアやモーリシャスでの同性同士の性的行為の非犯罪化など、2021年も世界から注目を浴びているLGBTQ+の話題は多いけれど、その一つに日本も含まれている。
世界が注目しているのは、日本におけるLGBT平等法(Equality Act Japan)の導入。
日本ではこれまで、LGBTQ+の人々がセクシャリティやジェンダー・アイデンティティを理由に解雇や異動など職場で不当な扱いを受けても、その不当さを訴えるための法律は存在してこなかった。ちなみに、LGBTQ+への差別をなくす法律がある国は80カ国以上。G7の中でそれがないのは日本だけ。日本では、LGBT理解増進法としたい自民党とLGBT差別解消法としたい野党のあいだで協議が続いてきており、2021年5月14日に両者が合意案に了承。今国会成立が目指されている。しかし合意案には性的指向・性自認を理由とする差別の禁止が規定されていないなど、まだ多くの課題が残されていると指摘されている。
日本の現状はオリンピックの開催決定を機に海外でも知られるようになり、米トムソン・ロイターは『2021年のLGBT+問題10選』の中で「日本」をLGBTQ+問題における注目の国のひとつとして挙げ、「LGBT+の人々は、異性愛者と同じような法的保護を受けておらず、同性婚は非合法で、性的指向や性自認は国の職場や住宅に関する法律では保護されていません。LGBT+の権利を擁護する『平等法』を、夏の大会に向けて政府が制定することを求める声が高まっています」と報じた。
さらに、2021年1月には、116の人権団体とLGBTQ+団体が連盟で日本の菅義偉首相に、性的指向や性自認に基づく差別から保護する法律の導入を約束するよう書簡を送付。
その団体のひとつである国際人権組織ヒューマン・ライツ・ウォッチは、「東京2020夏季大会は、"多様性における統一"を祝い、"レガシーを後世に残す"ことを謳っています。そのためには、日本は、LGBTの人々やアスリートを国際基準で保護するために国内で差別禁止法を制定する必要があります」とした。
オリンピックのホスト国になると、スポーツやおもてなしなど文化面での注目が上がる一方で、政治や人権問題など社会面での注目も上がる。日本の動きを世界が見ている。(フロントロウ編集部)