アダルト動画の暴力性
イギリスのノーフォーク警察署長であり、英警察長カウンシルにおける児童保護のリーダーであるサイモン・ベイリーが、各地の学校や保護者たちへ向けて動画を配布。多くの子供たちが、アダルト動画からセックスについて学んでいるとして、警鐘を鳴らした。
アダルト動画の出演者はセックスのプロではなく、あくまで「俳優」であり、アダルト動画はセックスのリアルを表しているわけではない。
英The Higher Education Policy Instituteが行なった調査によると、それまでに受けた性教育のおかげで大学に上がる頃にセックスや恋愛関係に対する準備ができていたかという質問に強く同意したのは、たったの6%。やや同意すると答えた子供たちも21%しかいないという結果になっている。
「若い子供たちが、健全な恋愛関係とはどのようなものかを理解するうえで、大きな問題がある」
ベイリー署長がそう語るように、アダルト動画の悪影響は問題となっている。レイプなどの犯罪に関してだけではなく、例えば同意のあるセックスのなかで、望まない暴力を受けたことがある女性は多い。
英Savanta Com Resの調査では、69%の女性が、性行為中にはたかれるなどの暴力を経験したことがあると回答し、そのうち38%がその行為を望んでいなかった、31%が回答したくない、または経験したことがないという答えだった。
英The Centre for Women's Justiceは、その一因として過激な内容のアダルト動画をあげている。
現実に暴力を引き起こしているアダルト動画
また、ベイリー署長はこう続けた。
「とくに若い男性は幼い頃からアダルト動画を見ていて、それは(見る人を)鈍感にする。そして、より多くの暴力、レイプ、深刻な加害など、現実に結果として起こっていることに関連性を見つけられるうえ、それは各地の学校でも起こっている」
警察署長という立場の彼が、アダルト動画が現実で起こっている暴力に影響していると指摘することは、事の重大さを感じざるをえない。
事実、2019年には、アダルト動画に影響されて恋人をレイプしてしまったとして、イギリスに住む17歳の少年が自分で自分を通報するという事件があった。
とくにインターネットが登場してからは、18歳以上という年齢制限があったとしても、幼い頃からアダルト動画を見ることができると署長は指摘する。より一層アダルト動画の悪影響が広がるなかで、教師や保護者がそのリスクについて話すことや、正しい性教育が必要だと呼びかけた。
こういった問題に取り組んでいるのはイギリスだけではなく、ニュージーランド政府は2020年に、「Keep It Real Online」というキャンペーンのなかで、1つの動画を公開。少年がアダルト動画を見ていた時に、そこに出演していたポルノ俳優が家を訪れ、アダルト動画と現実は違うと説く。そして少年の母親が、きちんと息子と話す、という重要なメッセージをコミカルに描いたもので、高い評価が寄せられた。
(フロントロウ編集部)