少年たちの刹那のラブストーリー『Summer of 85』
『Summer of 85』は、1985年のフランスの海辺町を舞台に、運命的に出会った2人の少年の美しくも儚いひと夏の初恋を描いたフランス映画。英作家エイダン・チェンバーズによる青春小説『Dance on my Grave(邦題:おれの墓で踊れ/徳間書店)』を原作に、フランス映画の巨匠フランソワ・オゾンが、少年が愛に溺れ永遠の別れを知るまでの6週間を色鮮やかな映像美で映し出す。
『Summer of 85』あらすじ
セーリングを楽しもうとヨットで一人沖に出た16歳のアレックス。突然の嵐に見舞われ転覆した彼を救助したのは、18歳のダヴィド。二人は急速に惹かれ合い、友情を超えやがて恋愛感情で結ばれる。アレックスにとってはこれが初めての恋だった。互いに深く想い合う中、ダヴィドの提案で「どちらかが先に死んだら、残された方はその墓の上で踊る」という誓いを立てる2人。しかし、ダヴィドの不慮の事故によって恋焦がれた日々は突如終わりを迎える。悲しみと絶望に暮れ、生きる希望を失ったアレックスを突き動かしたのは、ダヴィドとあの夜に交わした誓いだった。
そんな本作はSNSで、「ポスターから予告まで私好みすぎて、ヨーロッパの男たちはいつも私を戸惑わせる」「オーディションで発掘した主演2人も、イギリス人の女の子もみんな良かった」と、キャスティングに絶賛が挙がっている作品でもある。
オゾン監督が発掘したフェリックス・ルフェーヴルとバンジャマン・ヴォワザン
オゾン監督は、17歳で原作と出会い感銘を受けたという。そんな監督が、思春期に抱いたリアルな感情を映画に込めるために最も大切にしたのが、物語の中心となる、純粋無垢な16歳のアレックスと、自然体で自信に満ちたダヴィドという2人の少年の存在。「適役を見つけられなければ、この映画は諦めようと思っていた」と語るほど、キャスティングにこだわり抜いた。
そしてオゾン監督がオーディションで運命的な出会いを果たしたのが、1999年生まれの新人俳優フェリックス・ルフェーヴルと、1996年生まれの若手俳優バンジャマン・ヴォワザン。
アレックス役、フェリックス・ルフェーヴル
アレックス役を演じたフェリックスは新人俳優でありながら、オーディション時に彼をひと目見て「彼こそアレックスだ」と直感したオゾン監督によって主役に大抜擢。子供のように愛くるしい笑顔は生命感に溢れており、それでいて目にはどこか哀愁があるその雰囲気は、「あの80年代の大人気スター、リヴァー・フェニックスのようだ」とオゾン監督に言わしめた。あどけない顔立ちに知的な佇まいを兼ね備えているフェリックスだからこそ、人生の苦みを知らない無垢で内向的な少年が初めての恋の喜びと痛みを知り変化していく様子を見事に表現してみせた。
ダヴィド役、バンジャマン・ヴォワザン
一方、相手役ダヴィド役のバンジャマンは、俳優だけでなく脚本家としても活動する若手の注目株。当初アレックス役としてオーディションを受けるも、オゾン監督によってダヴィド役に抜擢された。
フェリックスがどことなくおどおどした羊のような印象のアレックスならば、野生動物のようなイメージのバンジャマンはまさにダヴィドにぴったり。そのアグレッシブでどこか刹那的な生き方をしている姿は、ジェームズ・ディーンに代表されるような、スピード狂で人を幸せにもすれば苦しめもするキャラクターを彷彿とさせる。バンジャマンはダヴィドのキャラクターについて、「サソリだ、何時間でも眺めていられるほど魅了され、毒を持つ尾の存在などすぐに忘れてしまう、それが彼だ」と解釈しており、官能と危険の香りをふんだんに撒き散らしながら豪快に映画を駆け抜けているその姿は、小さな町に現れた流星さながらに観る人を魅了する。
一見対照的な2人だが、「最初のスクリーンテストから、フェリックスとバンジャマンの間には通じるものが確かにあった。活き活きとしていたんだ」とオゾン監督が語るほど相性抜群。一目見て恋に落ちることに納得できるほどの化学反応を起こし、その演技が高く評価された2人は共に第46回セザール賞では有望若手男優賞にノミネート。名実ともに若手最注目俳優となったフェリックスとバンジャマンの、見た目の美しさに留まらない魅力を、本作で存分に味わってみてほしい。映画『Summer of 85』は8月20日(金)より日本公開。(フロントロウ編集部)