テイラー・スウィフトvs スクーター・ブラウン
原盤権買収・売却騒動のこれまで
ジャスティン・ビーバーの“恩師”として知られ、アリアナ・グランデ、デミ・ロヴァート、マディソン・ビアーといった人気シンガーをクライアントに持つ音楽マネージャーのスクーター・ブラウンは、2019年7月、自身が運営するイサカ・ホールディングスLLC.を通じてテイラー・スウィフトがかつて所属していたレコードレーベルのビッグマシン・レコードを買収。これにより、テイラーがデビューから2018年にユニバーサルミュージック傘下のリパブリック・レコードに移籍するまでにリリースした計6作分のアルバムに収録された楽曲の原盤権を手にした。
以前からスクーターや彼の周囲の人間から嫌がらせのような行為を受けていると感じていたテイラーは、これに激怒。自身が丹精込めて作った楽曲が“因縁の相手”であるスクーターの手に渡ったことを「最悪の悪夢」と呼び強く抗議した。
その後、テイラーはスクーターの手に原盤権が渡ってしまった過去のアルバムすべてを再レコーディングすることを宣言。2021年4月には、2ndアルバム『フィアレス』の再録版である『フィアレス(テイラーズ・バージョン)』をリリースし、11月には4thアルバム『レッド』の再録版である『レッド(テイラーズ・バージョン)』をリリースすることを告知している。
スクーターは結局、2020年11月にシャムロック・ホールディングスという未公開株式投資ファンドに自身が所有していたテイラーの楽曲の原盤権を売却。しかし、シャムロック・ホールディング社が原盤権を管理することになった後も、スクーター率いるイサカ・ホールディングスLLC.には利益が生じる契約となっている。
スクーターが語る“自分側のストーリー”
テイラーとのバトルの勃発から2年が経とうとしているなか、以前も、自身の行動に悪意はない」とコメントしていたスクーターが米Varietyとのインタビューで原盤権買収・売却にまつわる”自分側のストーリー”に言及。
テイラーの原盤権を手にしたことへの後悔や、テイラーとの間に生じた誤解について語った。
テイラーとの間に争いが生じてしまったことについて「後悔しているし、テイラーが取り引きにあんなリアクションを見せたことを悲しく思っている。これまでに起きたすべての事は、とてもややこしくて、事実には基づいていない」と口を開いたスクーターは、「彼女がどんな話を聞かされたのかは知らない。僕は何度か彼女と話し合いの場を持とうとしたんだ。でも、彼女はそれを拒否した」と過去にも話していたテイラーの誤解を解くために交渉しようとしたという説をリピート。
さらに、「テイラーに原盤権を売ることをオファーしたし、守秘義務契約だって結んだ、でも、彼女のチームはそれも拒否した」と、テイラーの“原盤権を買い戻すという選択肢は与えられなかった”とする主張を否定するコメントをした。
“いじめっ子”と呼ばれて
「すべてが残念だとしか言いようがない。オープンなコミュニケーションは重要で(お互いへの)理解に結びつくのに。彼女と僕は3、4回しかあった事が無いんだ。それらの機会はすべてとてもフレンドリーで親切心にあふれたものだった。彼女は素晴らしい才能を持ったアーティストだと思うし、僕が彼女に対してベストしか望んでいない」と語り、音楽業界全体を巻き込む一大騒動に発展した後も、テイラーに対してネガティブな感情は抱いていないことを強調したスクーター。
自身にとって、最もつらかったのは、世間からテイラーに対して嫌がらせをした“いじめっ子”というレッテルを貼られたことだと告白し、「いじめには僕は絶対に反対だ。僕はいつだって感謝と理解を大切にしている。(騒動の渦中にあっても)誇らしかったのは、担当するアーティストやチームが僕の肩を持ってくれたこと。彼らは僕の性格や真実を知っている。そのことは僕にとって大きな意味を持つことだった」と、テイラーのファンたちから怒りの集中砲火を受ける中で、周囲の人たちのサポートに助けられたと話した。
テイラーとのひと悶着のおかげで、「世間に誤解されてしまったと思う? 」という質問には、スクーターは「そうだね。でも、成功に誤解はつきものだから。成功というのはチェスのようなもの。チェスボードのうえでは、四手、五手くらいまで進まないと、人々には自分がどんな作戦に出ようとしているかはわからない。誤解が生じてしまうのは、人々が見たいようにしか物事を見ないから。でも、おたがいに少しだけでも柔軟になれたらいいよね」と、成功にまつわる独自の持論で返している。
自身の主張とは相反する内容も含むスクーター側の言い分に対して、テイラーは今のところ反応していない。(フロントロウ編集部)