メンタルヘルスを優先し、決勝を棄権したシモーネ・バイルズ選手
7月27日に開催された東京オリンピックの体操女子団体総合の決勝戦に出場したものの、途中棄権したアメリカ代表のシモーネ・バイルズ選手。リオ五輪では4つのメダルを獲得し、世界選手権では史上最多となる通算19個の金メダルを手にしたバイルズ選手は、今回の東京五輪ではいくつ母国アメリカに金メダルを持ち帰ることになるのかと全米のスポーツファンたちの注目を集めていただけに突然の行動には衝撃が走った。
その後の会見を通じて、棄権の理由をメンタルヘルスを優先するためだと明かし、「極度のストレスを感じる状況に直面すると、異常な精神状態に陥ってしまうものです。私は自分の健康を危険に晒すのではなくメンタルヘルスにフォーカスしなければなりません。私たちは自分の体と心を守らなくてはならないのです」と語ったバイルズ選手。
女子体操界の頂点に立つ彼女がオリンピックという大舞台で経験する多大なプレッシャーに言及し、自らの心の健康のためにするべき決断をしたと語る様子や、棄権後も競技場でチームメイトたちを励まし、鼓舞し続ける姿には、著名なセレブやアスリート仲間を含む多くの人たちが心を打たれ、激励のコメントを寄せた。
ジャスティン・ビーバーが共感コメント
一夜明け、米体操連盟は、メンタルの状態が安定しないためバイルズ選手が29日木曜日に出場予定だった個人総合の決勝を欠場することを発表。引き続き多くのセレブたちがバイルズ選手の決断を“英断”だと称えるなか、シンガーのジャスティン・ビーバーも彼なりに思うところがあったようで、インスタグラムに表彰式でのバイルズ選手の写真を投稿し、バイルズ選手に宛ててこんなメッセージをしたためた。
「君が直面しているプレッシャーは誰にも理解できない! 君と僕には面識が無いけど、棄権するという君の決断を僕はとても誇りに思うよ。自分の魂を失ってまで世界を手中に収めることに何の意味があるんだろう。それくらいシンプルなこと。ノーは時にイエスよりもパワフルだ。いつもなら大好きなはずの事が喜びを奪い始めたら、一歩引いて、それが一体なぜなのか考えてみることが重要。僕がパーパス・ツアーを中止すると決めた時、人々は僕をクレイジーだと思っていた。でも、僕にとっては、自分のメンタルヘルスのためにできる最善のことだったんだ‼ シモーネ・バイルズ、君をとても誇りに思うよ」
2017年7月、それまで世界各国で150回に渡り公演を行なってきたワールドツアー『パーパス・ツアー』を残り14公演を残してキャンセルし、心の健康を取り戻すためにその後約2年間にわたって音楽活動をセーブしたことで知られるジャスティン。
当時の自分の心境をバイルズ選手の現状に重ね合わせつつ、メンタルヘルスを優先するというバイルズ選手の決断は正しいものだと肯定した。
立場は少し違うものの、世界中から期待と視線を浴び続ける存在という点では確かにバイルズ選手とジャスティンは同じ。ジャスティンの言う通り、どんなに「ノー」と言うのが困難に感じる状況でも、「ノー」を提示してみることで新しく見えてくる事もあるのかもしれない。(フロントロウ編集部)