シム・リウ、アジア系男性から女性への攻撃を問題視
ついに9月3日より劇場公開となったマーベルによるMCU映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』。
アジア系ヒーローが主人公となるMCU作品は初であり、主演のシム・リウは、「僕が子供だった時には、こうやって目指すべきスーパーヒーローがいませんでした」と、本作のレプリゼンテーションがアジア系コミュニティ、とくにアジア系の子供たちに与える影響について、感激の言葉を口にしている。
そんなシムは、カナダ出身の俳優。アジア系へのステレオタイプなど、差別を経験してきた彼は、それが自分の自尊心に影響してきたと米Hollywood Reporterのポッドキャストで認める。そのうえで、アジア系コミュニティのなかで、男性から女性への攻撃があることに、怒りをあらわにした。
「僕たちの(アジア系アメリカ人)コミュニティにおいて、アジア系男性がアジア系女性を攻撃する時に、非常に危険な言い分が話されている時があると思う。『アジア系女性として、こんな特権を持っているじゃないか』というものだ。なぜなら、アジア系女性のほうが魅力的で、社会的立場が(アジア系男性よりも)高いと見られるから。
僕は、コミュニティ内での争いを憎んでいる。僕たちはお互いに高めあい、一緒にいるべきだ。そしてそれ以前に、アジア系の男性も女性も、同じ問題に苦しんでいるだろう。それは、僕たちの経験は、白人の視点から定義されているということ。だから、僕たちはそれぞれ、その問題の影響を経験していて、その影響は異なる」
シムが指摘するように、白人優位の社会において、アジア系として人種差別を受ける男性と、同じ人種差別に加えて女性差別を受ける女性が直面する状況は異なる。
アジア系女性はアジア系男性よりもモテるという意味で“特権を持っている”とする人もいるが、特権とは、特定のアイデンティティを持つ人が努力しないで手に入れられる権利のこと。例えば、男性に生まれたから妊娠・出産を理由にキャリアに影響が出ることがない、というようなものがある。そのため、そもそもモテることは女性の特権ではないうえ、それに加えて、女性がモテる傾向があること自体に差別やハラスメントが含まれていることが多い。
例えば、アジア系女性はすぐに“ヤれる”とされたり、個人の性格などではなく“アジア系だから”と好意を寄せられたりする問題には、“イエローフィーバー”や“アジアンフェティッシュ”という言葉があるが、それらは一般的にアジア系女性に向けられるもの。こういった問題を背景に2021年3月に発生した、3つのアジア系マッサージ店で6人の女性が殺された銃撃事件は記憶に新しい。
シム・リウ、男らしさとは?
しかし、アジア系男性がアジア系女性を攻撃することはある。そんな状況を改善するためには、“男らしさ”について考える必要があると、シムは語る。
「アジア系男性が男らしさについて語りはじめ、男らしさを奪われたことや、自分たちの目標や会話をどのように発展させていきたいかを語り始めるなかで、本当の“男らしさ”とは何を意味するかを再定義できたらと僕は願う。アジア系アメリカ人の男らしさという言葉は、これまで長いことなかった。だからなぜそれを、昔からの男らしさの欠陥すべてを説明するのに使うんだろう」
それぞれのメンタルヘルスや社会に対して有害となる“男らしさ”は「トキシック・マスキュリニティ(Toxic Masculinity)/有害な男らしさ」と呼ばれ、近年大きく注目されている。これまでにも、ティモシー・シャラメやハリー・スタイルズ、ブラッド・ピットなど、数々の男性が率直な思いを語ってきたが、シムもまた、次世代の男らしさを作っていきたいと考えている。そんな彼は、こう続けた。
「男性の弱さや、自分の男友達や周囲の人々に感情を伝えられることを良いことだとしないか?女性を尊敬し、アジア系アメリカ人の女性たち、そしてすべてのマイノリティグループをサポートし、より良い味方でいることについて話さないか?」
(フロントロウ編集部)