ラッパーのリル・ウェインが若い頃から精神的な問題を抱えていたこと、そして今日までどのように対処してきたかについて語った。(フロントロウ編集部)

リル・ウェインがメンタルヘルスについて語る

 “音楽界で最も権威ある賞”と言われるグラミー賞を過去に5度受賞し、これまでに数々のヒット曲を世に送り出してきた人気ラッパーのリル・ウェインが、若い頃からメンタルヘルスの問題を抱えていたことを明かすと同時に、自分と同じ悩みを抱える人たちに向けて、助けが必要なときには声を上げるよう呼びかけた。

 「自分が弱い部分を見せることで、精神的な問題を抱えている人の助けになればと思ってる。勇気を持って一歩を踏み出すことが大事なんだ」

 すでにご存じの方もいるかもしれないが、2018年、リルは米Billboardのインタビューで、これまで事故と称していた銃創が自殺未遂によるものだったことを初めて明かした。今年8月、ポッドキャスト『Uncomfortable Conversations(原題)』に出演したリルが、番組ホストで元NFL選手のエマニュエル・アチョに語った話によると、10歳の頃、正確には“ラップをしてはいけない”と言われたとき=彼にとって創造性を脅かされる危機に瀕したときに、初めて自分が内面的に苦しんでいることに気づいたという。

画像: リル・ウェインがメンタルヘルスについて語る

 「(ラップができないなら)死んでもいいと思ってた。思考が過激になり、自分で自分を制止して、『俺は今、一体何を考えていたんだ?』と自分自身に問いかけなきゃいけないこともあった。けれど、その考えを抱えたまま眠りについて、次の日に目を覚ますと、『自分がそんなことを考えていたなんて信じられない』ってなるんだ」。次第に学校の授業をサボるようになり、そのことが母親にバレたらラップを禁止されるのではないかと思い、ますます気を病むように。そして、12歳のとき、リルは母親が寝室に護身用として置いていた銃の引き金を引いた…。

自殺未遂を経て伝えたいこと

 母親から通報を受けた警察官がリルの家に到着したとき、彼は重傷で血を流し床に倒れていた。数人の警察官がリルの安否よりもドラッグや銃の有無を確認するなか、ひとりの警察官がリルのもとに駆け寄ってきて、まだ息があることを確認すると「お前を絶対に死なせない」と言ってくれた。数年後、その警察官と再会を果たした際、「ただ、大切な命を救うことができてよかったと言いたい。それ以外に望むことはない」と言われたという。

 12歳で自殺を図るも一命を取りとめたリルは、それから数年後にラッパーとして大成功を収めるが、名声を得ても精神的な問題が急になくなることはなかったという。毎晩のショーの歓声と拍手が終わると、リルは自分が孤独であることに気づき、もし今あるすべてのものを失ったとしても、自分のことを気にかけてくれる人はいるのだろうかと考えたことも。

画像: 自殺未遂を経て伝えたいこと

 そんなリルは、現在、1日に2回、祈りを捧げることで心の平穏を保っており、「とても幸せ」と言えるほど良い状態にある。彼の経験から学べることは何か? リルの場合は、メンタルヘルスについて弱音を吐くという習慣がまったくない家庭で育ったこともあり、自分の気持ちを伝えるのに苦労したという。

 「誰にも相談できなかったし、(自分が抱えていたものを)誰にも吐き出せなかった。学校の友達に相談することもできなかった。友達の前ではつねにクールであろうとしていたから。家庭で何か問題があったとしてもそれを言う相手がいなかった」と、過去の自分について振り返ったリルは、もし身近にメンタルヘルスの問題を抱えている人がいたら、“真剣に向き合ってあげてほしい”と話す。

 「それがどれくらい深刻なものなのかを知る術はない。でも、もし誰かが勇気をふりしぼって、自分でもわからない異変が起こっていることを認めたら、そのことを信じ、可能なかぎり真剣に向き合ってほしい」

 また、リルの母が彼の自殺未遂を機に変わったように、自分の子供が助けを求めてきたときは、それが「リアルなんだ」ということを知っておいてほしいとした。

悩みを抱えて相談を必要としている方へ
日本いのちの電話連盟
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(フロントロウ編集部)

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