メットガラでオスカー・デ・ラ・レンタのドレスを着用したビリー・アイリッシュ
2021年のメットガラで、映画『DUNE』のティモシー・シャラメや日本出身のテニス選手である大坂なおみ、ジョー・バイデン氏の大統領就任式で詩の朗読を行なったことで注目された詩人のアマンダ・ゴーマンと共に共同でホストを務めたアーティストのビリー・アイリッシュ。
付き人5人がかりで歩く必要があるほどの大きなトレーンが注目を集めたビリーのドレスは、オスカー・デ・ラ・レンタ(Oscar de la Renta)によるもの。『In America:A Lexicon of Fashion(イン・アメリカ:アメリカのファッション辞典)』という今年のメットガラのテーマに合わせ、ビリーはこのドレスでマリリン・モンローやグレース・ケリーといったアメリカの大女優や、バービーというアメリカンカルチャーにオマージュを捧げた。
ビリー・アイリッシュがオスカー・デ・ラ・レンタを選んだワケ
歴代最年少となる19歳でメットガラの共同ホストに抜擢されるなど、今やアメリカを代表するアイコンの1人となっているビリー。メットガラという晴れ舞台でそんなビリーに自分たちの衣装を着てほしいと望んでいたブランドは多かったはずだが、ビリーがオスカー・デ・ラ・レンタを選んだのには、彼女らしい理由があった。
ビリーはこれまで、オスカー・デ・ラ・レンタのドレスをレッドカーペットなどで着たことが一度もなかったのだが、米New York Timesによれば、ヴィーガンで、動物愛護の活動も行なっているビリーは今回、オスカー・デ・ラ・レンタのドレスを着用するにあたり、毛皮を使っているブランドとは仕事をしないと事前に伝えていたそう。
ブランドでクリエイティブ・ディレクターを務めているフェルナンド・ガルシアとローラ・キムによれば、2人は数年前から自身のデザインに毛皮は使用しておらず、ブランドとしてもレッドカーペットでは毛皮を使用しないという方針を取っていたというが、今回のビリーとのコラボを機に、ブランドとして完全に毛皮の使用を停止するという方針に転換するよう、ブランドのエグゼクティブ・ディレクターを務めるアレックス・ボーレン氏に提言。その後、ボーレン氏が正式に、今後は毛皮を使わないという方針を決めた。
「(今は亡き設立者の)オスカーが言っていたことについて何度も思いを馳せました。彼は毛皮の大ファンだったのですが、彼がファッションビジネスにおいて特に心配していたのは、自分の目が老いてしまうことでした」とボーレン氏は米New York Timesに語っている。「私は、異なる視点を持った人々に囲まれた環境に身を置かなければいけないと考えています」。
弱冠19歳でメットガラというファッションの祭典でホストを務めただけでも歴史的なことだが、それだけでなく、1つのブランドの方針まで転換させてみせ、ファッション業界に大きな影響を与えたビリー。
彼女は「2021年というこの時点でも毛皮が完全には禁じられていないことにショックを覚えています」と米New York Timesに語った上で、今回、自身とのコラボを機にオスカー・デ・ラ・レンタが方針を転換したことについて、「私がそのきっかけとなり、この問題を周知することができたことを名誉に思います」とコメントを寄せた。(フロントロウ編集部)