黒人奴隷でなくスーパーヒーローを
若い頃にはラッパーとして人気を博し、その後俳優として映画『インデペンデンス・デイ』や『メン・イン・ブラック』、『アラジン』など、数多くの世界的ヒット作に出演してきたウィル・スミス。
そんな彼は、じつはこれまでに黒人奴隷の歴史を題材とした作品に出演したことがない。黒人だからといって奴隷についての作品に必ずしも出演するわけではないが、30年にわたる演技のキャリアを持ち、アクションからヒューマンドラマ作品までこなしてきたウィルの経歴を思うと、意外かもしれない。
しかしそこには、ウィルの意思があった。米GQのインタビューで彼はこんな思いを明かしている。
「奴隷についての映画を作るのは、いつも避けてきたんだ。キャリアの始めでは…、その方向で黒人を描きたくなかった。僕はスーパーヒーローになりたかった。白人とともに、黒人の長所も描きたかった。トム・クルーズに渡されるような役をやりたかったんだよ。それ(黒人奴隷についての映画への出演)について初めて考えたのは、『ジャンゴ 繋がれざる者』。でも復讐についての奴隷映画を作りたくはなかった」
ウィル・スミスが黒人奴隷を演じる最新作
黒人奴隷の歴史は忘れてはならないものだが、ウィルが演じてきたような、かっこよくてみんなの憧れになるような黒人キャラクターが存在することは社会において非常に重要。ウィルが意識して作り出した功績は大きい。
しかしそんなウィルが、現在、初めて黒人奴隷を題材にした作品の制作を進めている。
アマゾンスタジオによる『Emancipation(原題)』は、働かされていた農場から北部へ逃げきり、軍に入った男性が、その後南部へ戻り仲間を助けるという物語。実話を元にした作品で、ウィルは本作について、黒人奴隷を描いた映画『それでも夜は明ける』よりも『アポカリプト』のような作品だと説明している。
「これは黒人の愛や力についてのものなんだ。そしてこれこそが、僕が心を動かされるもの。僕たちを無敵にしてくれる黒人の愛についての物語を作ろうとしている」
53歳となったウィルの新境地に期待がかかる。
(フロントロウ編集部)