『DUNE/デューン 砂の惑星』の絶対悪
IMAXで新感覚の映画体験ができるとして話題の映画『DUNE/デューン 砂の惑星』は、宇宙の覇権をかけた戦いを描くフランク・ハーバート原作のSF超大作。
ティモシー・シャラメ演じる主人公のポール・アトレイデスや、オスカー・アイザック演じるポールの父親レト、ジェイソン・モモア演じるアトレイデス家の戦士ダンカンやゼンデイヤ演じるフレーメンのチャニなど、陽の雰囲気を持つキャラクターたちが人気だが、一方で目が離せない絶対的に暗い存在がいる。
アトレイデス家と対立するハルコンネン家の当主であるウラディミール・ハルコンネン男爵と、その甥であるグロッス・ラッバーン。この物語は、この2人がいなければ成り立たないと言わしめる存在感を放つ。
デイヴィッド・リンチ監督による84年版では恐怖よりも気持ち悪さを感じるキャラクターだった2人だが、2021年版では恐怖と悪を感じる存在となっている。
ハルコンネン家の2人を演じた2人の俳優
このたびメガホンを取ったドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は、原作を読んだ時からハルコンネン男爵は「カリカチュア(※)」すぎると感じており、だからこそ怪演で知られるステラン・スカルスガルドにオファーを出したという。ステランもまた、「カートゥーンに出てくるような悪役は、絶対に怖くはならない」と、米EWのインタビューで監督に同意していた。
※風刺を目的とした絵画。
そしてラッバーンを演じたデイヴ・バウティスタは、本作で悪役を演じるうえで、心に抱えていたという考えを明かした。
「悪人は存在する。悪人で、強欲で、権力を求め、悪いことをしたがる人々はいる。人間の最悪の部分を見せ、それが信じられるように演じることが重要だった。観客はこれが理解でき、そういう悪人に気づく。誇張しているわけじゃない」
悪人にも心はある、様々な顔がある、といった要素を重要視する作品は多いが、デイヴの発言からは、本作ではあくまで絶対悪とでもいうような人物像を描くことにしたことが感じられる。そしてそれは、彼が話すように、観客にも理解できることだっただろうか。
映像体験に肌は震えるが、そこに込められた思いには心が震える。映画『DUNE/デューン 砂の惑星』は、劇場公開中。
(フロントロウ編集部)