武器係の職務怠慢を関係者が告発
現地時間10月21日、米ニューメキシコ州で撮影中だった映画『Rust』のセットで、撮影監督のアリナ・ハッチンスが小道具の銃の誤射によって亡くなる事故があった。この事故でジョエル・ソウザ監督も負傷し病院に搬送されたが、現在は回復している。公開された裁判資料や捜査令状によると、銃に弾が装填されていることを知らずに撃った主演俳優のアレック・ボールドウィンは、事前に助監督から“安全だ”と伝えられていたそうで、アレックに銃を渡した助監督や武器係の確認不足が事故の原因と見られている。
実際、アーマラー(武器係)といって、銃器の管理に加え、キャストに銃器の安全な取り扱いを指導する役割を担っていたハンナ・グティエレス・リードの仕事をぶりについて、ある関係者は「(彼女は)銃を安全な場所に鍵をかけて保管していませんでした。銃器を乗せたカートをセットのいたるところで目にしました。ほかの現場ではもっと安全に気をつけていて、プロフェッショナルでした。銃器を扱うのはアーマラーだけで、安全に管理するのが彼女たちの仕事です。彼女の場合は銃器をカートに乗せていただけで、まわりに誰もいないこともあったし、誰でもそれを手に取ったり、いじったりすることができました」と証言している。
ちなみに、この関係者が米Peopleに提供した写真には、『Rust』のセット内に設置されたテーブルの上に置かれたバッグに無造作なかたちで入れられた複数の銃が写っていた。
また、一部でハンナは経験の浅いアーマラーで、経験豊富なアーマラーが辞めてしまったため、代わりに雇われたのが彼女だったと報じられているが、この関係者は「それらの報道内容は嘘です。彼女は撮影初日から現場にいました。彼女はずっとこの現場で働いていました」と否定している。
助監督は別の銃誤射事故で前の現場をクビに
さらに、アレックに実弾が入っていない“コールドガン”だと言って銃を渡した助監督のデイブ・ホールズは、2019年に制作された『Freedom's Path(原題)』という作品で銃関連のトラブルが原因で解雇されたことが明らかになっている。
Peopleによると、セットで小道具の銃が不意に発射されるという出来事があったそうで、音響部のスタッフが驚いて飛び退いた際に怪我をしたという。この事故が原因でホールズ助監督は現場を去ることになり、新しい助監督とアーマラーが雇われるまで撮影は再開されなかったと本作のプロデューサーは米CNNの取材に対して語っている。
照明技師が「怠慢とプロ意識の欠如のせい」と非難
ちなみに、『Rust』のセットで起きた悲劇的な事故の一部始終を目撃した照明技師のセルゲイ・スヴェトノイは、「アリナの命を奪い、ジョエル・ソウザ監督を負傷させた致命的な一撃の瞬間、私はアリナと肩を並べていた。死にかけている彼女を私は抱きしめていた。彼女の血が私の手に付いていた。なぜこのようなことが起きたのか、自分の意見を伝えたい。私にはそれをする権利があると思う」として、Facebookにこのような投稿を行なっている。
セルゲイは、すべては「怠慢とプロ意識の欠如のせいだ」と言うと、「現場で銃を確認するはずだった人がそれをしなかった。装填された銃が現場にあることを知らせなければならなかった人がそれをしなかった。銃をセットに持ち込む前にチェックすべき人がそれをしなかった。その結果、人が死んだ」と非難。名前こそ明かさなかったものの、銃の管理を任されていた人たちが職務を全うしなかったことが事故の原因だと言い切った。
知らなかったとはいえ、アリナの命を奪ってしまったアレックはかなり憔悴しているというが、事故の責任をめぐっては、アリナの父も「私はアレック・ボールドウィンの責任を問うつもりはありません。小道具の銃の管理を任されていた人たちの責任です」と英The Sunの取材で述べている。(フロントロウ編集部)