※この記事には『ミッドサマー』のネタバレが含まれます。
狂気に満ちた世界観でファンを魅了『ミッドサマー』
映画『ミッドサマー』は、映画『へレディタリー/継承』のアリ・アスター監督が制作したホラー映画。スウェーデンの山奥にある架空の村“ホルガ”で90年に一度だけ開催される祝祭を見学しに行く5人の大学生たちの旅の様子を描いている。
その狂気に満ちた世界観と、たたみかけるように映し出される不可解な描写は多くのファンを魅了し、ネット上では本作の解釈について活発な議論が交わされた。
主人公のダニーを演じたのは、映画『ブラック・ウィドウ』のフローレンス・ピュー。そして、ダニーの彼氏のクリスチャンをジャック・レイナーが、友人のジョシュをウィリアム・ジャクソン・ハーパーが、マークをウィル・ポールターが、ペレをヴィルヘルム・ブロングレンが演じた。また、本作には1971年公開の名作映画『ベニスに死す』のビョルン・アンドレセンが、村の老人役として参加している。
そんな本作で特に話題なのが、物語後半に行なわれる“性の儀式”。
『ミッドサマー』の“性の儀式”
主人公ダニーの恋人クリスチャンはホルガ村に住む少女マヤに誘惑され、族長的な人物から一方的にセックスの許可をされる。その後彼は、麻薬成分があると考えられる怪しい飲み物を飲まされ、お香を嗅がされ、朦朧とした意識のまま、不気味な歌を歌う大勢の全裸女性たちに囲まれる中でマヤとセックスをした。

©️B-REEL FILMS
実はそのシーン撮影の舞台裏には、驚きの事実があった。
“性の儀式”、精神崩壊ギリギリの撮影
映画を見た人ならご存知の通り、マヤとクリスチャンの性の儀式は、クリスチャンたちがホルガ村に到着した時から着々と準備が整えられていた。クリスチャンが何の疑いも持たずに食べたパイの中に陰毛が混入していたのも、儀式に至る過程のひとつ。性の儀式のシーンは、物語の中でも最もクレイジーな瞬間として多くのファンに強烈な印象を残している。

ジャック・レイナー
クリスチャンを演じたジャック・レイナーは米Thrillistとのインタビューで、性の儀式の撮影には、なんと2週間もの時間がかかったことを明かし、「毎日仕事に行き、個人的に信じられないほど屈辱的で動揺するようなものを撮影し、その中で自分について考え、自分をその立場(クリスチャンの立場)に置こうとする…ハードコアな出来事だった」と語った。
また、クリスチャンが全裸になったのは自分自身のアイディアだったとも明かしたジャック。彼は、何十年もの間女優が受けてきたのと同じような状況を自分に課すことを考え、映画界のバランスを取り戻すために全裸になることを選択したという。
「女性に対する性的暴力のシーンには(被害者である女性が)全裸のものが多く、彼女たちはそう演じてこなくてはならなかった。(このシーンは)それをひっくり返すチャンスだと思った。観客にとって、このキャラクター(クリスチャン)が可能な限り弱く、屈辱的な状態で出てくるのは重要だと思った」
撮影について、「本当にハードコアだった」と繰り返したジャック。2週間にもわたる全裸撮影で、心身ともに疲れ切ってしまった様子。Netflixなどで配信されているモザイクなしのディレクターズカット版では、性の儀式が終わった後のクリスチャンの局部に血液が付着しているなどの生々しい描写もあったため、相当このシーンの撮影には苦労したものだと思われる。

フローレンス・ピュー(左)、アリ・アスター(中央)、ジャック・レイナー(右)
ちなみに“性の儀式”の裏側で起こっていた主人公ダニーの号泣シーンの撮影時間は、なんと2時間。ダニーを演じたフローレンスは、2時間泣き叫びっぱなしだったことを振り返り、「恐ろしかった」と明かしている。
監督のアリ・アスターは現在、映画『ジョーカー』で知られるホアキン・フェニックスを主演に迎えた新作映画『Disappointment Blvd.』を制作中。そちらの作品も、多くのファンに期待されている。(フロントロウ編集部)
※本記事では、一部「クリスチャン」と表記するところを「ダニー」と誤記しておりましたので、修正いたしました。