ファンを驚かせた『ノー・タイム・トゥ・ダイ』の最後
6代目ジェームズ・ボンドであるダニエル・クレイグの最終作として、コロナ禍での度重なる公開延期を経て、2021年に劇場公開された『007』シリーズ25作目の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』。
ダニエルは有終の美を飾ったと言える高評価を得た本作の魅力はいくつかあれど、そのエンディングは確実にそのうちの1つだろう。
1969年公開のシリーズ6作目『女王陛下の007』へのオマージュを多く含み、しかし現代の観客にあったものとなったエンディングは、ダニエルとプロデューサーたちが長年温め続けた方向性に沿ったものであり、キャリー・ジョージ・フクナガ監督にオファーがされた時には決まっていたものだった。
『007』のネタバレ対策は?
そんなエンディングだが、公開後であっても、ファンの協力のかいあってインターネット上でネタバレがむやみやたらに話されることはなかった。それだけ『ノー・タイム・トゥ・ダイ』という作品がファンの心に響いたと言えるが、制作中から、制作陣はかなりのネタバレ対策をしていたよう。
米ポッドキャスト番組『Crew Call』で、『007』シリーズの長年のプロデューサーであるバーバラ・ブロッコリがこんな裏話を明かした。
「私たちは脚本に関して、非常に秘密主義です。しかしもちろん、スタッフや、私たちが何を行なっているのかを知る必要がある人々のために脚本を作らなければいけません。なので、私たちはエンディングが書いていないものや、エンディングを別のものに書き換えたバージョンを作りました。つまり囮ですね」
スタッフにすらエンディングは知らせないという徹底した対策を講じたうえで、制作陣は、本当のエンディングがバレないように別のエンディングを考えた! 別のエンディングであっても『007』脚本チームのクリエイティビティが発揮されていそうで、もはやそのエンディングも知りたいものだ。
バーバラがいつからこの対策を取っているのかは不明だが、『007』シリーズといえば、2014年に発生したソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントへのハッキング事件で、シリーズ24作目となる『007 スペクター』の初期の脚本が流出したことは有名。
世界中から注目が集まるシリーズ作品の制作現場は、様々な方向に気を張らなければならないよう。
(フロントロウ編集部)