※この記事には『AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章』第1~10話のネタバレが含まれます。
第10話の隠れメッセージ
- キャリーがパリで持っていたエッフェル塔のバッグは、映画1作目でキャリーがミスター・ビッグと家探しをしていた時に愛用していたもの。
- サマンサから明日の夜会おうと言われたキャリーは「FABULOUS(ファビュラス)」と返すが、これは、オリジナルシリーズでキャリーが発した最後のセリフ。
- ロックのためにトランスジェンダーのラビを雇えたことをキャリーとミランダに伝えたとき、シャーロットが“It’s beshert!(運命ね)”と言うが、これはオリジナルシリーズでシャーロットがユダヤ教徒に改宗しようとしていたときに発した言葉。ミランダらは当時は意味が分からずシャーロットに確認していたが、今回はもちろんきちんと意味は伝わっていた。
キャリーがパリに舞い戻る
ファンの間で“ミスター・トリッグ”と呼ばれて人気を博していた数学教師のピーターとデートに行ったキャリー。デートの終わりには「君にキスしたい いいかな」と聞かれてキスもしたが、恋をしているときの“何か”が欠けているとキャリーは感じる。キャリーはその時に上手い言葉が見つからないが、これは“ザザズー”ではないだろうか。
ザザズー(zsa zsa zsu)は、オリジナルドラマのシーズン5でキャリーが作り出した造語。恋をしたときに感じるドキドキや相手を焦がれる思いを言葉にしたもので、当時キャリーは「ザザズーなしでどうして交際が上手くいくのか」と力説していた。つまり、ピーターとの恋は進展しないということか?
そんなキャリーは第10話で大きな決断を迫られる。ミスター・ビッグの一周忌がせまるなか、クローゼットの中に眠るビッグの遺灰をどこに埋葬するかということ。悩みに悩んだ結果、ビッグとパリにいる夢を見たキャリーは「私たちの橋」にビッグを埋葬すると決断する。「私たちの橋」とは、オリジナルドラマのシリーズフィナーレで、ビッグがキャリーに「Carrie, you’re the one(キャリー、君こそ僕の運命の人だ)」と言ったあの橋。そして、一周忌に合わせてパリを訪れたキャリーは橋の上から川へとビッグの遺灰をまくのだが、この時、遺灰はTimmy Woodsのエッフェル塔バッグの中に入れ、Valentinoのクチュールガウンでドレスアップしと、なんともキャリーらしいファッショナブルなお別れの仕方だった。
ノスタルジーあふれるハートウォーミングなこのシーンのあと、ファンを驚かせたのが、同僚であるフランクリンとのキス。新番組をオファーされたチェがロサンゼルスに引っ越すため、自分のポッドキャスト番組『セックス・アンド・ザ・シティ』をスタートさせたキャリー。1回目の生配信後にエレベーターで起きた突然のキスは、ピーターとの間に欠けていた情熱にあふれ、スクリーン越しにも“ザザズー”が感じられるシーンだった。すでに制作が決まっているシーズン2では、フランクリンとの関係が発展していくのか? それともこのキスがキャリーを刺激して次シーズンは多様な恋愛が豊富になるのか?
ミランダが難しい選択をする
ミランダは超難関の末に勝ち取った有名NGO団体でのインターンを蹴って、チェと一緒にロサンゼルスにプチ移住すると言い出す。NGO団体に応募する際の推薦状を書いたナヤや、超現実主義のミランダを知っているキャリーは驚きを隠せないが、ミランダは「私は変わっちゃいけないの?元に戻るのもダメ?死ぬまで自分のルールを守れと?」と言って、“愛する人を支えたい”という心に従ってLA行きを決める。
この決断は、30代だった頃のミランダが聞いたら失望して怒鳴り散らしそうな話。実際に『SATC』シーズン4では、夫トレイとの子作りに専念するために仕事を辞めると宣言したシャーロットを見下すような態度を取ったとして、シャーロットと大喧嘩になった。そんなミランダが、50代になりシャーロットと同じ立場に。
ネット上では「フェミニストのミランダがなぜ」とする声も一部あがったが、女性の幸せは結婚だと断言するのが間違っているように、女性の幸せはキャリアだと断言するのも間違っていること。女性が自分の生きたい人生を自由に生きられるようになることこそフェミニズム。バリキャリ女性であるミランダが愛を追うという決断をしたことは勇気がいることだったはず。この決断が吉と出るか凶と出るか分からないが、ミランダの決断を温かく見守ってあげたい。
ちなみに、LAに向かうミランダは昔ながらの赤毛に戻っていた。これは、“新しいことに挑戦するけど、自分を失ったわけではない”という静かなメッセージなのかもしれない。
シャーロットは最高の友人であり母親
シャーロットは、末っ子ロックの“ゼイ・ミツバ”を成功させるために奔走する。ユダヤ教では女児は12歳になると“バト・ミツワー”、男児は13歳になると“バル・ミツワー”という成人式を行なうのだが、ロックはノンバイナリー(※)であるため、女児用の“バト”でも男児用の“バル”でもなく、ノンバイナリー用の“ゼイ”・ミツバを開くことに。シャーロットはわざわざトランスジェンダーのラビ(※女性のユダヤ教指導者)まで見つけて式を取りまとめるのだが、当日にロックが参加を拒否したため、シャーロットは式典をシャーロット自身用のバト・ミツワーとして決行する。
※ノンバイナリー:女性または男性のどちらかだけに分類・限定されないジェンダーのこと
『AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章』では、夫を亡くしたキャリーや、夫との離婚を決めたミランダと比較するとゴタゴタがあまりなくて“控えめ”だと言われてきたシャーロットだが、今回のシリーズはシャーロットのその人間性の深さを強固にした。
“ここまで用意したんだからやりなさい”とロックに無理やりゼイ・ミツバをやらせるようなことはせず、逆に持ち前のポジティブさで式典を別のイベントへと変えて“成功”させたシャーロットは、お手本にしたいくらい愛と理解にあふれた母親。ミランダが愛を見つけたことを心から喜び、ビッグの遺灰をまくためにパリに同行してほしいというキャリーのお願いを「絶対行ける」と二つ返事で承諾するシャーロット。大切な人のためならば120%をやり、どんな状況でも物事の良い側面を見ようとする底抜けのポジティブさを持つシャーロットは、誰もが望む友人ではないだろうか。
サマンサとキャリーが“再会”
第10話ではさらに、サマンサとキャリーが数年ぶりに会うことに。ビッグの遺灰をまきにパリを訪れたキャリーは、ヨーロッパで暮らすサマンサに「パリにいる。カクテルでも飲まない?」とメッセージを送り、「明日の夜はどう?」と返事をもらう。次のシーンではキャリーはすでにニューヨークに戻っているため、キャリーとサマンサの再会は視聴者の想像に任せるということのよう。
サマンサ役のキム・キャトラルはシリーズ復帰はないと断言しているが、プロデューサーでもある主演のサラ・ジェシカ・パーカーは「サマンサがいなくなったわけではありません。彼女を演じていた俳優は役を降りてしまったけど、あなたが望まないかぎりあなたの人生からいなくなることはないんです」と言っているため、今後もサマンサは顔を見せない形でシリーズの中に存在していくよう。
第10話ではほかにも、子供が欲しいかどうかで意見が分かれているナヤとアンドレが数か月離れて暮らして「赤ちゃんを望むことで何を失うか」を確かめようとしていたり、独身貴族のシーマがクラブオーナーのゼッドと真剣交際に発展しそうになっていたりと、次シーズンへの期待が高まる展開が多かった。
ドラマ『AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章』シーズン1全10話は、U-NEXTにて見放題で独占配信中。最終話である第10話の翌週(3月9日)には、ドラマの撮影に密着したドキュメンタリー番組『AND JUST LIKE THAT... / ザ・ドキュメンタリー』がU-NEXTで見放題で独占配信スタート。撮影の舞台裏を見られるだけでなく、キャストや脚本家、スタイリスト、プロデューサーなどから貴重なエピソードを聞くことができる。U-NEXTでは、『セックス・アンド・ザ・シティ』全6シーズン及び映画2作も配信中。(フロントロウ編集部)