男女差別の解消には男性が行動を起こす必要がある
今年の国際女性デーのテーマである「バイアスを壊せ」に合わせ、「バイアスを壊すことは男性から始まる」というメッセージを、欧州評議会の事務局長であるマリヤ・ペイチノヴィッチ=ブリッチ氏が国際女性デーに発信した。
欧州評議会の公式サイトで事務総長が話したのは、男女の賃金格差についてで、差別を解消するためには男性が行動を起こすべきだと話した。
「同等の仕事に対する同等の給与を実現するためには、男性が行動を起こす必要があります。同僚としてでも、雇用者としてでも、意思決定者としてでも、法に携わる者や変化を求める人としてでも、兄弟としてでも、夫としてでも、父親としてでも、そして息子としてでも、彼らは賃金格差への理解を広げるべきです」
これまで長い間、多くの女性が差別に対して声をあげてきたが、権力や決定権を持つ地位に男性が多い社会では、男性も行動を起こさなければ社会は改善しない。
フロントロウが、国連ウィメン日本協会の田中由美子理事に行なったインタビューでも、理事が「女性だけで議論し続けるのではなく、男性をもっと巻き込まないといけないと思っています。だからもっと身近な男性にジェンダーのいろいろな問題について語りかけて、一緒に変わっていかないといけないのではないかという気がしています」と話してくれたとおり、男性の意識や行動にも変化は必要。
事務総長は、変化を起こすために、「私たちはまず、平等でない賃金を引き起こすことが多い有害なジェンダーによるステレオタイプや性差別を止めることから始めることができるでしょう」とし、さらに、「男性も女性も、同一賃金の原則を企業に警告する有益な法的対応を支持することができます」と綴った。
ほとんどの分野で賃金格差は深刻
社会において、エンターテイメント業界から女子スポーツ界まで多くの分野で賃金格差は深刻な問題となっている。
例えば俳優のミシェル・ウィリアムズは、映画『ゲティ家の身代金』において、10日間の追加の撮影で約10万円弱のギャラとなったが、共演者のマーク・ウォールバーグには合計で約1億6,500万円が支払われた。その差は1650倍となる。
この作品はミシェルが主演であり、さらに彼女はアカデミー賞に4度のノミネート経験がある人物。一方でマークは助演であり、アカデミー賞へのノミネートは1度だった。
また、アメリカの女子サッカーチームは、ワールドカップとオリンピックで合わせて8回の優勝を達成しているが、1度も優勝したことのない男子サッカーチームよりも給与やトレーニングなどの待遇面でかなりの差があり、女子代表チームは裁判を起こした。
賃金格差解消のために声をあげる人々
2022年現在でも深刻な賃金格差だが、声をあげ、行動を起こす人は増えている。
米女子サッカー代表チームの賃金問題が発覚した後の2019年女子ワールドカップでは、試合後に観客も一丸となって「Equal Pay(平等な賃金を)!」という大合唱を起こし、男女ともに女性が直面する賃金格差に声をあげることができるという良い例となった。
� EQUAL PAY #USWNT pic.twitter.com/hQMGz6q54H
— Mina Park (@minapark) July 7, 2019
その後アメリカサッカー連盟は、アメリカ女子サッカー代表の28 名に約26 億円(2,400 万ドル)を支払い、さらに、男子選手と賃金が均等になるようにボーナスを追加することで合意。また、今後はワールドカップを含むすべての試合で男子チームと女子チームで同じ賃金を支払うことを誓った。
また、俳優のベネディクト・カンバーバッチは男性として行動を起こした人物で、女性の共演者が自分と同等のギャラでなければ作品に出演しないと発表している。
とはいえ、まだ地位や権力がない人が声をあげるのは難しい。俳優のジリアン・アンダーソンは、俳優としてキャリアを築いた今だからこそ声をあげられるようになったと話している。
さらに、そもそもお金について話すことがタブーでなくなる文化が必要だとして、お金についてあえて話すという行動を取っている人たちもいる。例えば俳優のローラ・ダーンは、「(女性たちが)お金について話すことは、セックスについて話すより恥ずかしいことだとされてる」と指摘し、女性たちがお金について話せるようになっている時代の変化を喜んだ。
そして、俳優のジェニファー・ローレンスは、昔はギャラ交渉の時に「めんどくさい」「図太い」と見られたくないと感じていたが、ハリウッドにおける男女の賃金格差が明白になってからは、インタビューなどでもギャラについてコメントすることが増え、社会のなかで会話を生み出している。
(フロントロウ編集部)