トロイ・コッツァーがアカデミー賞助演男優賞に輝く
ろう者の男性として初めてアカデミー賞にノミネートされていた映画『コーダ あいのうた』のトロイ・コッツァーが、第94回アカデミー賞で助演男優賞を受賞した。ろう者としては、映画『愛は静けさの中に』で主演女優賞を受賞したマーリー・マトリン以来35年ぶりとなる快挙となる。
助演男優賞は、映画『ミナリ』で知られる韓国人俳優のユン・ヨジョンがプレゼンターとして発表。ユンは「オスカーは…」とだけ話した後に、手話と見られる動きをしたため、その時点で会場からは歓声が。そして続けて、「トロイ・コッツァー」と名前が発表されると、会場では出席者が手話の拍手でトロイの演技を称賛した。
Troy Kotsur is the first deaf man to win an acting #Oscar. https://t.co/YILAwH0cbk pic.twitter.com/5xl4CydyEy
— Variety (@Variety) March 28, 2022
そして、ユンからオスカー像を受け取ったトロイだったが、手話でスピーチをするためにオスカー像を誰かにあずけたいという仕草を見せたところ、すぐにユンが彼の手から像を受け取ってサポート。トロイだけでなく、トロイの少し手を握って彼への敬意を見せたユンの姿にも、多くのファンが称賛を送っている。
Her holding it for him so he can sign they're so precious #Oscars pic.twitter.com/PqXdl7k3jw
— ⭒ (@dansensolsens) March 28, 2022
トロイ・コッツァー、彼らしい受賞スピーチ
トロイは受賞スピーチの始めに、「大統領であるジョーと、ジル博士に会い、悪口の手話を教えようと計画していましたが、マーリー・マトリンに叱られました。だからマーリー、心配しないで。今日のスピーチではFワードは使わないよ」と話して会場を笑わせ、まるで彼が映画のなかで演じたフランクのような一面を見せた。
そして、彼は過去に、ろう者である自分が俳優になるのは厳しいと警察官である父親に言われたという苦しい思い出を明かしていたが、スピーチでは父親への感謝を話した。
「私の父は家族のなかで最も上手く手話を話す人でしたが、車の事故に遭って首から下が麻痺してしまい、もう手話は出来ません。父さん。あなたから多くのことを学びました。いつでも愛しています。あなたは私のヒーローです」
彼の辛くも愛にあふれるスピーチは、多くの人の心に刺さっている。
そして最後に彼は、「これはろう者コミュニティ、CODA(コーダ(※))コミュニティ、そして障がい者コミュニティへ捧げます。これは私たちの瞬間です。私の母、父、そして兄弟のマーク、みんなは今日ここにはいません。しかし私を見てください。やりましたよ。みんなのことを愛しています。ありがとう」と話して、スピーチを終えた。
※Children of Deaf Adultsの頭文字をとった言葉。ろう者の親のもとで育った子供のこと。
(フロントロウ編集部)
※当初、signer(手話を使う人)をsinger(歌を歌う人)と誤訳していた箇所を修正いたしました。