監督が問題となった『アデル、ブルーは熱い色』
2013年に公開された映画『アデル、ブルーは熱い色』はカンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞し、日本でもヒット。通常パルム・ドールは監督に贈られるが、本作では主演のレア・セドゥとアデル・エグザルホプロスにも贈られたほど2人の演技は高く評価された。
一方で、本作は公開当時に、俳優やスタッフから監督であるアブデラティフ・ケシシュへの批判が大噴出。スタッフは組合を通して劣悪な労働環境を明かす声明を発表し、レアも撮影時の経験について口を開いていた。
当時、英The Guardianのインタビューで、「私はスクリーンの中で愛し合うことはしない。私たちは物事を偽れる。感情は偽れないけど、ボディランゲージは偽ることができる」と話したレアは、男性目線の妄想を作り出していると心配になったことはないかと聞かれ、こう答えた。
「イエス。もちろん。時には侮辱的だった。娼婦になった気分だった。もちろん、彼はそれ(男性目線の妄想)を使っていましたよ。3台のカメラを使い、嘘のオーガズムを6時間も演じて…。それは何でもなかったとは言えないですね」
インティマシー・コーディネーターがいてもなお…
さらに、劇中で話題となったベッドシーンの撮影には10日間が費やされたことも知られている。2017年に各国の映画業界の女性たちが、蔓延する性暴力に声をあげたMeToo運動をきっかけに、映像作品におけるセックスシーンやヌードシーンなどの撮影ではインティマシー・コーディネーターという専門家が雇われることが多くなっている。
先日、米TRHのインタビューで、もし当時もインティマシー・コーディネーターが現場にいたら状況は変わっていたと思うかと聞かれたレアは、そうはならなかっただろうと話した。
「ノー。そうは思えません。あれはそれで済むものではなかったです。映画全体の話なのです。セックスシーンの話だけではないのですよ。あの映画を撮った方法はただただクレイジーだった。あの男は頭がおかしいのです」
公開から約10年が経つが、それでもレアのなかにある怒りは消えないほどの撮影だったのだろう。とはいえ、レアは今でもカンヌ映画祭でのお気に入りの思い出は『アデル、ブルーは熱い色』だと話し、監督以外には因縁はないよう。
(フロントロウ編集部)