ベースのヴィクトリアがトップレスでステージに立つのは性的消費への反発
そしてもちろん、ベーシストであるヴィクトリア・デ・アンジェリスのトップレスの衣装はここ日本のステージで健在。ヴィクトリアは、乳首の部分をテープで隠した上でトップスを脱いでパフォーマンスを行なうことで知られているが、サマーソニック東京会場でのパフォーマンス時にも、途中からお馴染みのこのファッションが登場した。
ヴィクトリアがこのような格好をしてパフォーマンスしているのは、女性の身体が常に性的消費の対象とされてしまうことに立ち向かうため。本当は乳首を出していたいほどだというヴィクトリアは、2021年に米GQとのインタビューでトップレスの格好をすることについて次のように語っている。
「女性の身体というのはいつだって性的に見られてきました。それは最悪なことですし、誰しもが自分らしくいられるべきで、自分が好きな見た目であっていいと思います。私が乳首を隠さざるを得ないのはそういう理由です」。
男性が公共の場で乳首を出すのは問題がないが女性は問題視されるのはダブルスタンダードだが、そのダブルスタンダードの背景にあるのは、女性の身体は性的モノ化されてきたという事実。そうした事実に反発してきたヴィクトリアは、幼少期の頃から“女の子はこうあるべき”というジェンダー規範がしっくり来ていなかったといい、「6歳のとき、私は「女性的なもの」をすべて拒否するようになりました。スケートボードに乗り、髪を短くして、ボーイッシュな格好をして。スカートを履かなかったのは、スカートが嫌いだったからではなく、自分らしさを主張したかったからです」と2021年にイタリア版Elleに話している。
幼少期のアイドルは、キム・ゴードンなどの女性ロックスターたちだったというヴィクトリアは、イタリアの新聞Corriere della Seraに彼女たちを尊敬していた理由について次のように語っている。「私は男性的な振る舞いがまかり通ってきた分野で重要な役割を果たしてきた女性たちを尊敬しています」。
男性優位な社会の中で“隠さざるを得ない”という理由で乳首を隠しながらも、そうした社会に反発し、自分らしい衣装でパフォーマンスしているヴィクトリア。彼女のそんな衣装をはじめ、マネスキンは4人全員がジェンダーフリーの衣装をまとったり、LGBTQ+の人々に抑圧的な傾向があるポーランドで行なった公演で男性メンバー同士がキスをしたりと、社会の抑圧に抗議してきたことでも知られているが、マネスキンは日本のステージでもそうした姿勢を貫いていた。(フロントロウ編集部)