記念撮影で口を覆ったドイツ代表と、腕章で抗議したマヌエル・ノイアー
日本時間11月23日にカタールW杯でサッカー日本代表の初戦となるドイツ代表との試合が行なわれて、2対1で日本代表が劇的な勝利。試合開始前には、恒例となっているスターティングメンバーの写真撮影が行なわれたが、ドイツ代表の11人は手で口を覆うポーズをして写真に収まった。
この時、ドイツ代表でキャプテンを務めるゴールキーパーのマヌエル・ノイアー選手は、左腕に巻いたキャプテン・マークが写らないようにする形で写真に収まったのだが、ドイツ代表の選手たちがこのような形で写真に収まったのは、今回のW杯において、差別反対を表明する「One Love」の腕章をピッチで着けることを主催者であるFIFA(国際サッカー連盟)が事実上禁止したため。
カタールでは、LGBTQ+の人々や女性の権利を迫害するような法律が問題になっているほか、移民労働者に対する非人道的な扱いも問題になっており、ワールドカップ開催決定から現在まで約6,500人の移民労働者が亡くなり、賃金の未払いが発生していると報じられている。一方でFIFAは、「One Love」の腕章を身につけた場合は制裁を課す可能性があるとしている。
ドイツのサッカー協会は今回の写真撮影の意図について声明を発表。人権を支持することはそもそも政治的な活動以前のことだとして、次のように記した。
「政治的な声明として行なうものではありません。人権は交渉の余地がないものです。当然の権利であるべきものであるにかかわらず、いまだに重要視されていないのです。従って、このメッセージは我々にとって重要なものでした。私たちの腕章を封じることは、私たちの声を封じるのと同義です。我々は自分たちの姿勢を支持します」
It wasn’t about making a political statement – human rights are non-negotiable. That should be taken for granted, but it still isn’t the case. That’s why this message is so important to us.
— Germany (@DFB_Team_EN) November 23, 2022
Denying us the armband is the same as denying us a voice. We stand by our position. pic.twitter.com/tiQKuE4XV7
マヌエル・ノイアーが着用した「No Discrimination」腕章はFIFAのもの
ノイアー選手は当初、W杯では「One Love」の腕章を着用することを考えていたものの、制裁としてイエローカードが課される可能性を考慮して、最終的に日本戦では「No Discrimination(差別禁止)」と描かれた腕章を着用。これは、FIFAの公式の腕章であることから、ノイアー選手はよく見えない形で着用することを選択して、腕章の巻き方でもFIFAに抗議する意図を示した。
「One Love」の腕章については、開幕前にドイツやイングランド、ノルウェー、ウェールズ、ベルギー、スウェーデン、スイスの代表チームが着用を宣言していたが、FIFAが制裁を加える可能性を示唆したことを受けて、着用を断念すると共同声明で発表していた。
一方、ロイター通信によれば、FIFAがカタールW杯で「One Love」の腕章を制裁の対象にしたことを受けて、世界的にこの腕章が飛ぶように売れているという。腕章を製作しているオランダの会社Badge Direct BVによれば、この2週間弱で1万を超える注文を受けて、一時品切れ状態になったという。
「One Love」の腕章は、元々はオランダサッカー協会が2020年に発案したもので、人種や肌の色、性的指向、文化、信仰、国籍、ジェンダー、年齢など「あらゆる形の差別」への反対を表明するものとなっている。カタールW杯をめぐっては、巨額契約でカタールのアンバサダーに就任して、W杯の宣伝活動を行なってきたデビッド・ベッカムにも批判が寄せられている。(フロントロウ編集部)