ウォルト・ディズニー・カンパニー・アジア・パシフィックがシンガポールでコンテンツ・ショーケース2022を開催。アメリカからスタジオの重役らがリモートで参加した、米スタジオ作品のショーケースの模様をレポート。(フロントロウ編集部)

ディズニーがシンガポールでコンテンツ・ショーケース2022を開催

 シンガポールにあるマリーナ・ベイ・サンズにて、現地時間11月30日と12月1日の2日間にわたってウォルト・ディズニー・カンパニー・アジア・パシフィックがコンテンツ・ショーケース2022を開催。アジア太平洋地域(APAC)のオリジナル作品と併せて、米スタジオの新作ラインナップが紹介された。

画像: ウォルト・ディズニー・カンパニー・アジア・パシフィックのプレジデントを務めるルーク・カン氏。 ©️Courtesy of The Walt Disney Company

ウォルト・ディズニー・カンパニー・アジア・パシフィックのプレジデントを務めるルーク・カン氏。

©️Courtesy of The Walt Disney Company

 今年で2回目の開催となったAPACでのコンテンツ・ショーケースは、マーベル・スタジオ、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ、ピクサー、ルーカスフィルムという米・スタジオ作品の発表からスタート。今年9月に米・カリフォルニア州アナハイムで開催されたディズニーのファンイベントD23 Expo 2022で発表されていた作品を中心とした新作ラインナップが、改めてアジア市場に向けて紹介された。

MCUフェーズ5ではさらにアジア系の俳優/スタッフを起用すると明言

 今回はシンガポールでの開催ということもあり、米・スタジオ作品のショーケースにはスタジオの重役や作品の監督らが現地からリモートで参加。アジア市場に向けて彼らから発せられたメッセージのなかで特に強調されていたように感じたのが、作品を通じて世の中の多様性やレプリゼンテーションを描くことの重要性だった。

画像: コンテンツ・ショーケース2022にリモートで参加したマーベル・スタジオ共同社長のルイス・デスポジート氏。 ©️Courtesy of The Walt Disney Company

コンテンツ・ショーケース2022にリモートで参加したマーベル・スタジオ共同社長のルイス・デスポジート氏。

©️Courtesy of The Walt Disney Company

 マーベル・スタジオのショーケースには、同スタジオで共同社長を務めるルイス・デスポジート氏がリモートで参加。2023年2月17日に公開される来たる新作映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』より、いよいよMCUのフェーズ5が幕を開けるが、フェーズ5ではさらに俳優やスタッフにアジア系を起用していくつもりだという。

 フェーズ4ではMCU初のアジア系ヒーローである、シム・リウ演じるシャン・チーがデビューするなどしたが、司会から“フェーズ5では俳優やスタッフにアジア系の人々が増えるでしょうか?”と訊かれると、デスポジート氏は「イエス」と明言。「スタン・リーはこう言いました。『マーベルは私たちの外の世界を反映している』のだと。そして、私たちもその考えを大切にしています」と、マーベル・メディアの名誉会長だった故スタン・リーの考えを引用しながら、世の中を忠実に描くことの重要性を説いた。

 デスポジート氏は次のように続けた。「私たちが住む世界は素晴らしいまでに多様な場所であり、我々の映画やドラマはそれを反映する必要があります。私たちはエンターテイメント企業であり、楽しませることが役目ですが、カメラの前にも後ろにも、異なる人種や文化、宗教、年齢、性別から多様な人たちを集めなければなりません。それぞれがユニークな観点や視点、アイディアを持ち寄ることで、それが集まった時には魔法を誕生させることができるのです」。

 加えて、コンテンツ・ショーケースでは、来たるMCU映画『ザ・マーベルズ(原題)』に、ドラマ『梨泰院クラス』で知られるパク・ソジュンが出演することが発表。早速、フェーズ5に新たなアジア系の俳優が加わることが明らかになった。

画像: ダークサイドの新たな力を描くミステリー・スリラーとなる『スター・ウォーズ』の新シリーズ『アコライト(原題)』は、ディズニープラスにて配信予定。 ©️Courtesy of The Walt Disney Company

ダークサイドの新たな力を描くミステリー・スリラーとなる『スター・ウォーズ』の新シリーズ『アコライト(原題)』は、ディズニープラスにて配信予定。

©️Courtesy of The Walt Disney Company

 ちなみに、ルーカス・フィルムによる来たる『スター・ウォーズ』の新シリーズ『アコライト(原題)』にも、ドラマ『イカゲーム』で知られるイ・ジョンジェが出演するが、コンテンツ・ショーケースでは彼からの動画メッセージが紹介される場面も。ルーカス・フィルムの作品にも、アジア系の俳優が新たに加わることになる。

ディズニー作品は言語の壁を超える

 そして、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオのショーケースには、2023年冬に公開が予定されている、来年のディズニー100周年を記念した新作映画『ウィッシュ』で共同監督を務めるファウン・ヴィーラスンソーンと、『アナと雪の女王』で女性として初めて同スタジオ作品の監督を務めた、スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるジェニファー・リーがリモートで参加。

画像: コンテンツ・ショーケース2022にリモートで参加したファウン・ヴィーラスンソーン(左)とジェニファー・リー(右)。 ©️Courtesy of The Walt Disney Company

コンテンツ・ショーケース2022にリモートで参加したファウン・ヴィーラスンソーン(左)とジェニファー・リー(右)。

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 レプリゼンテーションを反映する上では、俳優やスタッフに物語の当事者を起用することが大切だが、2023年に公開予定のナイジェリアを舞台にした新作『イワジュ(原題)』の製作にあたっては、「私がこの役割を引き受けたのは、その地域の人たちによって伝えられる、世界中の物語に関心を持っていたからです」と、ジェニファーもそうしたレプリゼンテーションを大切にしたと強調する。

 『イワジュ』は、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオとアフリカ系コミック・エンターテインメント企業であるクガリ社による初のコラボレーションによって製作されるオリジナル・アニメーション・シリーズで、近未来のナイジェリア・ラゴスが舞台になっている。

画像: 『イワジュ(原題)』は2023年に公開予定。 ©️Courtesy of The Walt Disney Company

『イワジュ(原題)』は2023年に公開予定。

©️Courtesy of The Walt Disney Company

 ウォルト・ディズニー・カンパニーは、ミッションとして「私たちを世界最高峰のエンターテイメント企業たらしめている象徴的なブランド、創造的な精神、革新的なテクノロジーを通じて、他に類を見ないストーリーテリングの力で、世界中の人々にエンターテイメント、情報、インスピレーションをお届けすること」と掲げているように、自分たちが伝える“ストーリーテリング”を特に大切にしている。そして、どんな舞台を描いたいかなる作品にも、誰もがそれぞれの視点で共感できることが、ディズニーの“ストーリーテリング”が持つ大きな魅力の1つ。

 タイにルーツを持つフォーンも、ディズニーのアニメ映画『ダンボ』を観て、普遍的なメッセージに共感したことが、ディズニーを志すきっかけになったという。「言語の壁は感じませんでした」とフォーンは語る。ストーリーテリングを通じて、「世界と共感することができたのです」と振り返った。

『リトル・マーメイド』アリエル役はハリー・ベイリー以外考えられなかった

 ディズニーのストーリーテリングには誰もが共感できる要素があるからこそ、今まで起用されてこなかった多様な人たちを起用したり、描かれてこなかったレプリゼンテーションを反映したりするのは大切なこと。2023年初夏に公開を予定している新作『リトル・マーメイド』で、不朽の名作である1991年公開のアニメーション映画がついに実写化されるが、アリエル役には黒人であるハリー・ベイリーが起用されている。

 黒人であるハリーの起用には一部の人たちから批判の声もあった一方で、D23 Expo 2022でハリーが初めてファンにお披露目された時には会場が拍手で包まれたが、今回コンテンツ・ショーケースにリモートで参加したウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャー・プロダクションのショーン・ベイリー社長も、アリエル役にはハリーしかいなかったと太鼓判を押す。

画像: コンテンツ・ショーケース2022にリモートで参加したショーン・ベイリー氏。 ©️Courtesy of The Walt Disney Company

コンテンツ・ショーケース2022にリモートで参加したショーン・ベイリー氏。

©️Courtesy of The Walt Disney Company

 多くの人に愛されてきた『リトル・マーメイド』を実写化する上で、「この世代にとってのアリエルを探していた」時に出会ったのがハリーだったとベイリー氏は振り返る。キャスティングにあたってロブ・マーシャル監督から電話があり、「1人だけ会ってほしい人がいるんだ」と言われて、ハリーを紹介されたという。

 「申し分のないほどに、彼女はアリエルだったのです。スクリーンテストの日を忘れることはないでしょう。本当に気分が高揚しましたし、皆さんにも映画で早く彼女に出会っていただきたいです。彼女は本当に素晴らしいですよ」とベイリー氏は語った。

画像: 映画『スノー・ホワイト(原題)』は2024年に劇場公開予定。 ©️Courtesy of The Walt Disney Company

映画『スノー・ホワイト(原題)』は2024年に劇場公開予定。

©️Courtesy of The Walt Disney Company

 ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーは、今後も『リトル・マーメイド』以外にも、過去の名作をアップデートした新作の公開が控えており、2024年に公開が予定されている『白雪姫』の実写版『スノー・ホワイト(原題)』では主人公にラテン系であるレイチェル・ゼグラーが抜擢されたほか、2023年にディズニープラスで配信される『ピーター・パン&ウェンディ』では、アフリカ系アメリカ人の母とイラン系アメリカ人の父を持つヤラ・シャヒディが、有色人種の俳優として初めてティンカー・ベルを演じる。

 来年2023年に創業100周年を迎えるウォルト・ディズニー・カンパニー。作品を通じて多様性に満ちた世の中のレプリゼンテーションを反映しながら、誰もが共感できるストーリーテリングでこれからも先頭に立ってエンターテイメント業界を引っ張っていってくれそう。(フロントロウ編集部)

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