“子どもに悪影響”や“不快”、サム・スミスのMVに批判が噴出
サム・スミスの「I’m Not Here To Make Friends」のMVは記事執筆時点でMVは297万回再生されており、「これは本当に驚異的」と称賛するコメントが書き込まれたり、サムがMVについて行なったインスタグラムの投稿にパリス・ヒルトンから“最高”を意味する炎の絵文字が連打で書き込まれたりと、ファンの間では広く支持されている。一方で、一部からは強い批判も集まっている。
その多くが、“子どもにこのような性的なコンテンツを見せるべきではないからYouTubeはサムのMVに年齢制限をかけるべき”だというものと、このような姿を見るのは“不快”だとするもの。
アスリートのタム・カーンは、「この不穏なコンテンツは一体何なんだ?英国政府は、(アンドリュー・)テイトのような勤勉とフィットネスを奨励する人物を学校から追放しているのに、この汚物を若者に広める堕落者については誰も声を上げないのですか?」とツイート。アンドリュー・テイトは女性差別の発言がひどすぎて大手SNSから追放された人物で、昨年末にレイプ容疑で逮捕された。
GBNewsのコメンテーターであるアダム・ブルックスは「サム・スミスの新しいビデオは全く汚らわしい。子どもたちは音楽チャンネルでこれを見るのです」とツイートした。
批判の何が問題? 背景にLGBTQ+差別と体形差別
一見すると、サムのMVは性的すぎるから子どもに見せない方が良いという子ども思いな主張に聞こえるが、今回の本当の問題はMVの視聴年齢ではない。そもそも洋楽MVでは過度に性的な描写は一般的で、多くの親が小さい子どもにはあまり見せたくないと思うであろうMVが毎月公開されている。そんななか今回は、LGBTQ+であるサムがジェンダー規範を壊しているMVに異様に激しい批判が集まっていることに問題がある。
英Guardianのコラムニストはこの問題をこうツイッターで分析した。「現代のポップミュージックにおいて、セックスは常に存在するテーマであり、ミュージックビデオはしばしばそれを誇示している。しかし、サム・スミスは、a)クィアである、b)痩せ型でないという犯罪行為を犯しているため、反LGBTQ文化がますます高まる中では許されないのです」。
YouTubeではグロテスクなシーンや暴力的なシーンが含まれる洋楽MVは年齢制限がかかるものがあるが、肌の露出やセクシーな描写が多いMVは規制がゆるい。子どもを不適切なコンテンツから守るのはもちろん重要。しかし今回は、LGBTQ+であるサムのMVに明らかに特出して拒絶反応が起こっていることが問題なのだ。
また、体形批判やルッキズムの問題もある。アーティストが半裸でゴージャスな格好を披露したミュージックビデオと言えば、例えば最近ならばハリー・スタイルズの「Music For a Sushi Restaurant」が思い起こされる。その時には、今回サムに対して起こったような激しい批判は出なかった。
サムのMVでの姿を批判する声には映像のコンセプトよりもサムの体形やルックスを理由に“不快”とするコメントが多く見られ、この反応の違いからは、社会の中のルックスに対する差別を認識する必要があるだろう。