『リリーのすべて』でトランスジェンダー女性を演じたエディ・レッドメインが、その後トランス俳優たちとワークショップを行ない、学んでいたことを明かした。(フロントロウ編集部)

エディ・レッドメイン、トランス俳優たちから学ぶ

 2015年に公開された映画『リリーのすべて』は、1882年から1931年を生きたトランジェンダー女性であるリリー・エルベの人生を描いた作品で、エディ・レッドメインやアリシア・ヴィキャンデルの演技が高く評価され、エディはアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。

 一方で、シスジェンダーの男性であるエディがトランジェンダーの人物を演じたことで、ストレートウォッシング(※)だという批判は多く、エディは2021年に英The Sunday Timesのインタビューで、自分がリリーを演じたのは間違っていたと話している。
※LGBTQ+キャラクターの役をシスジェンダー(性自認と生まれ持った性別が一致している人)/ストレート(異性愛者)の役者が演じること。

 「今ならあの役は引き受けません。僕はあの映画を最高のものにしたいという思いで作りましたが、それは誤りだったと思います。キャスティングにおける大きな問題は、多くの人が、候補にすら入れないということです。底上げが必要です。そうでなければ、この議論を今後も続けなければいけないでしょう」

 さらに、エディは批判を受けて、イギリスのロンドンにある演劇学校でトランスの俳優たちと一緒にワークショップを行ない、学んでいたよう。先日エディが、英The Guardianのインタビューで明かした。

画像: 『リリーのすべて』のアリシア・ヴィキャンデルとエディ・レッドメイン。

『リリーのすべて』のアリシア・ヴィキャンデルとエディ・レッドメイン。

 「数年前に、(演劇学校の)ロイヤル・セントラル・スクール・オブ・スピーチ・アンド・ドラマでトランスの俳優たちとワークショップを行ないました。そのうちの多くが、僕が『リリーのすべて』をすることにした選択について実に正しく問うてくれ、トランスの俳優の多くは、機会がないと感じて演劇学校には行かないことを指摘してくれました。自分が演じられると思える役がないなら、どうして(学校に)行こうと思うのか?
 俳優はみんな、すべてを演じられるようになりたいものです。それが俳優として夢見ることで、そうであるべきです。誰もジェンダーやセクシャリティで制限されたくない。しかし、歴史的にそれらのコミュニティには枠がなかった。それが底上げされないかぎり、僕は特定の役を演じません」

ストレートの俳優がLGBTQ+キャラクターを演じる問題点

 映像業界では、俳優がLGBTQ+当事者であることを公言すると、その後LGBTQ+キャラクター以外に起用されづらくなるという問題がある。さらに、最近では増えてきてはいるものの、LGBTQ+キャラクターが作品に登場することはまだまだ少なく、ストレートの俳優が採用されると、その少ない機会を当事者の俳優から奪ってしまうことになる。

 そのため、LGBTQ+キャラクターは当事者の俳優にという声がある。一方で、理想はLGBTQ+俳優であっても何の役でも目指せる環境であり、そのための意識を業界関係者が持つことは必要。

 また、LGBTQ+キャラクターは当事者の俳優に演じてもらうと固めてしまうと、LGBTQ+当事者であることを公表していない俳優がセクシャリティを詮索される事態も起こるため、注意が必要。

 当事者からも様々な意見が出ており、ラッセル・T・デイヴィスは、「俳優は“ゲイを演じる”ためにそこにいるわけじゃない。信憑性は私たちを楽しい場所へと導いてくれる」として、当事者に当事者の役をという姿勢。一方でニール・パトリック・ハリスは、「誰かがゲイっぽいかどうかって、誰が決められるんでしょうか?」反応しており、クリステン・スチュワートは、「こうした特定の決まり事に全員を当てはめてしまえば、私はもうストレートのキャラクターを演じられなくなる」と、悩みつつも意見を述べていた。

 エディが話したように、誰でも演じられることが演技を仕事にする多くの俳優の目標だが、まずは環境の改善が必要であり、その先にすべての人が自由に夢を追える世界がある。

(フロントロウ編集部)

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