映画『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督が約15年温めた映画『バビロン』。騒乱のハリウッドを舞台にした群像劇は、観るたびに映画づくりの奥深さが倍増するような映画体験ができる。それをスクリーンで成し遂げたチャゼル監督の哲学とは? フロントロウ編集部とチャゼル監督のインタビューでは、まずは出演者の“歯の汚さ”で盛り上がった。

この15年間、デイミアン・チャゼル監督の「ワン・デイ」映画だった

 『バビロン』のアイディアの種がチャゼル監督の頭に浮かんだのは約15年前。デビュー作となる2009年の映画『Guy and Madeline on a Park Bench』を制作する前だった。この映画を映画祭で観た、フォーカス・フィーチャーズの若きエグゼクティブだったマシュー・プルーフ(『バビロン』のプロデューサー)から連絡をもらったチャゼル監督は、“1920年代から1930年代の過渡期にあるハリウッドを舞台にした群像劇”というアイディアをプルーフ氏に明かし、そこから何年もアイディアの投げ合いを続けていたそう。そんな2人の間では、『バビロン』は”ワン・デイ映画=いつの日か映画”と呼ばれていたという。

画像: 現在38歳のデイミアン・チャゼル監督。『バビロン』のもととなったアイディアが浮かんだのは20代前半。約15年にも及びリサーチと構想で超大作を完成させた。

現在38歳のデイミアン・チャゼル監督。『バビロン』のもととなったアイディアが浮かんだのは20代前半。約15年にも及びリサーチと構想で超大作を完成させた。

デイミアン チャゼル:「会ったばかりのマシュー・プルーフにアイディアをプレゼンしたのです。私はLAに引っ越してきたばかりで、私たちは好きな映画やシネマについて議論しながら交流を深めた。そのなかで『バビロン』の核となるアイディアはつねにそこにあり、いつか作りたいと思っていました。マット(※マシュー・プルーフのあだ名)はいつも、『これはワン・デイ=いつの日か映画だね』と言っていました(笑)。『いつの日か作る。でもそのいつかは一生来ない。なぜならこれは壮大すぎるし、恐ろしすぎるし、自分たちは業界で知名度ゼロだし、月に行く計画を立てているようなものだ』と思っていた。しかしこの話をするのが楽しかったので何年も話し続けました」

 では、そのワン・デイ(=いつの日か)がやってきたと思えた理由は何だったのだろう?

デイミアン チャゼル:「ワン・デイはちょうど『ファースト・マン』(2018年)を終える頃にやってきました。マットと(リサーチを担当した)パトリック・マーフィーのおかげで、その時点で十分なリサーチを蓄積することができていました。必要な材料が揃ったと思えた。その前までは、(『バビロン』の舞台となる)世界をまだ十分わかっていないと感じていたのです。しかし『ファースト・マン』が終わろうとする頃には、これなら何かを作れると思えました。それに、ずいぶん先延ばしにしたなというのもありました(笑)。せめて挑戦しないと、“いつの日か”は本当にやってくることなく、この映画は本当にワン・デイ映画になるかもしれないと思ったのです。

 デイミアン・チャゼル監督が“ワン・デイ映画”と言うほど壮大で、そして約15年をかけて実現させた映画『バビロン』は現在公開中。(フロントロウ編集部)

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