デイミアン・チャゼルとジャスティン・ハーウィッツの手法とは
『ラ・ラ・ランド』で史上最年少にしてアカデミー賞監督賞を受賞したデイミアン・チャゼル監督は、ビジュアル・アートである映画を音楽スコアでリードするというスタイルを持つ監督。2月10日に公開される最新作『バビロン』でも、耳に届くを超えて体を突き上げるようなアグレッシブでエキサイティングな音楽が第80回ゴールデン・グローブ賞作曲賞を受賞。アカデミー賞でも作曲賞にノミネートされている。
そんなチャゼル監督の映画音楽を作るのは、2009年のデビュー映画『Guy and Madeline on a Park Bench』から全監督作品でコラボレートしている、ハーバード大学時代のルームメイトであるジャスティン・ハーウィッツ。今回、そのコラボレーションの舞台裏をチャゼル監督自身がフロントロウ編集部に明かしてくれた。
脚本家や監督のなかには、作品の構想段階にプレイリストを作って音楽を聴きながらインスピレーションを得るという人が多くいるが、チャゼル監督もそのひとりだそうで、「アイディアが湧きだすためには音楽が必要な性分なので、まずは音楽のプレイリストを作ります。映画には絶対に使わないと分かっている曲ばかりですが、私の気持ちを向かいたい方向へと導いてくれる音楽です」と話す。
その後、脚本の原案が仕上がると真っ先にハーウィッツ氏に脚本を手渡すという。「その時に自分が聴いていたプレイリストを一緒に渡すこともあります。渡さないこともありますが、そのときもどのようなムードの音楽を想像しているかは伝えます。脚本にそれが書かれていることもありますね。ただ、言いすぎはしない。彼がどんなものを生み出すかが知りたいですから、全体的なフィーリングや音楽が作品で成す役割を伝えるに留めます」とチャゼル監督。
そうしてボールが動きだすのだが、そこからが、非常に長く大変な作業が繰り返される。チャゼル監督から脚本原案とコメントを受け取ったハーウィッツ氏がピアノデモを作るのだが、それですぐに“これだ!”というものになるわけではなく、「何度も何度も何度もデモを聴き、いくつものメロディを聴くという作業が数週間から長い時で数年」続くという。この時、チャゼル監督とハーウィッツ氏が探しているのは、作品スコアの核となるメロディ。「まずは核となるメロディをいくつか見つけて、それらのメロディを軸にスコアを作っていく、というのが彼と私の作業の仕方なのです。そこからいくつかの楽器で演奏してみて、モックアップを作り、どんなサウンドスケープになるのか、感覚をつかみます」。