2009年公開のホラーの名作『エスター』の前日譚で“ファースト・キル(初の殺し)”が描かれる映画『エスター:ファースト・キル』(劇場公開中)。本作では、1作目の撮影当時は10歳だったイザベル・ファーマンがエスター役を再演! 新作の撮影時は23歳だったイザベルはどのようにして少女を演じたのか? 1作目では子役、新作ではプロデューサーも務めるイザベル・ファーマンにフロントロウ編集部が取材した。
画像1: 大人が「10歳少女」を演じるための役作りと撮影法とは? 『エスター ファースト・キル』制作秘話をイザベル・ファーマンが明かす【インタビュー】

今こうしてお話ししていても分かりますが、劇中の子どものような声と地声は全然違いますよね?

イザベル・ファーマン:そうですね(笑)。今回、1作目の時と同じアクセント・コーチを雇ったんです。10歳の私にエストニアのアクセントを教えてくれたのが彼なんですが、なんと彼、当時の全レッスンを収めたレコーディングをまだ持っていたんです!それらのテープが存在していたことは思いがけない幸運でした。彼は1作目の時には、毎日撮影現場にきてくれて、一緒に練習をしてくれましたが、今作では毎日Zoomをして、何度も何度も過去のテープを聞き返しながら、私の当時の発声の仕方やアクセントを覚え、セリフひとつひとつを練習しました。さらに彼は、声のトーンを高くする方法も教えてくれました。私が知る限り、編集で何か加えたりしていないですし、役者として誇りに思えるレベルまで持って行けたと思っています。

ちなみに、私はカットがかかった後も役のまま、というタイプの役者ではないので、現場で少女の声のままずっといるなんてことはなかったですよ。今作ではプロデューサーでもあったので、カットがかかった瞬間、少女の恰好をしたまま『今のカット見てみましょう』みたいな感じでやっていました(笑)。

アクセントの練習にはどのくらいの時間を要しましたか?

イザベル・ファーマン:撮影は2020年にカナダで始まったのですが、2週間の隔離期間中は台本を練習する以外にやることがなかったので、毎日何時間もアクセント・コーチと電話で話しながらセリフを何度も何度も練習しました。隔離が終わって撮影が始まる頃には、準備は十分できたと感じられました。2週間それしかやっていませんでしたからね。撮影中は(コロナ禍で)スタッフ同士の交流も禁じられていて撮影現場と家の往復だったため、前作を何十回も見たり、前作からのメモを見返したり、『エスター』の世界観にどっぷりとつかったのです。

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エスターに扮するためのヘアメイクについても教えてください。

イザベル・ファーマン:私自身の骨格が少し変化していたため、顔まわりを丸くするためにフェイスピースなどを検討してみたのですが、最終的に、太ろうということになりました(笑)。(メイクアップアーティストの)ダグ・モローが目の下のクマやしわを見事に消し去ってくれましたが、それ以外はマスカラもしていないし、メイクは最小限に抑えました。子どもを演じるためにメイクを色々やったと誤解されることが多いですが、逆にメイクをすればするほど子どもが持つピュアなルックから遠ざかってしまうので、やりすぎないバランスを見つけることが大事でした。結果、大成功だったと思います。私は子どもに見えますからね。今見てもクレイジーです!

おっしゃる通りです。身長の方はどうですか? 他の共演者の半分くらいでしたが…

イザベル・ファーマン:身長はより複雑でした。共演者たちが厚底のブーツを履いて背を高くして、私がかがんで背を低くしたり。厚底ブーツを履いたジュリアが私より数歩前に立って、私が右を見て、彼女が左を見ることで、強制遠近法の力で隣同士で話しているように見せたり。あと、バット・ドリーも使いましたね。バット・ドリーとは、カメラマンが足を使って動きまわりたい時に使う椅子です(※キャスター付きのオフィスチェアのミニサイズ版のような椅子)。撮影中にその椅子の利点に気づき、私が椅子に座って足でガラガラ進みながらジュリア・スタイルズ(トリシア役)を追いかけたりしていました。

そのようにクリエイティブに撮影を進めるのは本当に楽しかった一方で、やりながら、画面でうまく見えますようにと願う瞬間もありました。そもそもこの映画は、私が本当に10歳に見えなくては成立しないですから、完成した映画を初めて見たときは、自分が気味が悪いくらい本当に10歳に見えることにショックを受けたと同時に安堵の気持ちも大きかったです。その時、ジュリアと電話で話して、ブーツとかいろいろクレイジーなことをやったかいがあって良かったと安堵したのを覚えています。

ご家族は、10歳に戻ったあなたを見てどのような反応をしていましたか?

イザベル・ファーマン:すごく気味悪がっていましたよ! 試写会に参加した母と姉から電話がかかってきて、「やばい!気味が悪い!すごく幼く見えた!」って叫んでいました(笑)。母は1作目のときは10歳の私に同伴してくれて、セリフ読みも手伝ってくれました。そんな母は今作の私の演技を見て、誇りに思ってくれたようです。

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前作には子役として参加し、今作ではプロデューサーも務めています。それぞれ、どのくらい違う経験になりましたか?

イザベル・ファーマン子役と今で大きく違うことのひとつは、子役には勉学があることです。前作の撮影中も、時間がきたら学校に行く必要があった。一方で、今はクルーや共演者と交流する時間がたっぷりとあります。とくに『エスター ファースト・キル』に関しては、撮影がパンデミックの真っ最中で人と関われるのが撮影現場のみだったため、本当にあの場所を大切にしました。

また、子役は作品づくりの一員になれる一方で、年齢的に参加させてもらえないことも多いです。クリエイティブな人々と同じゴールに向かって働くのって本当に素晴らしいことなので、大人になってからの私は、クルーやキャストとの交流を大事にしており、トレーラーにこもるようなこともなく、いつも現場にいます。この仕事が大好きなんです。

『エスター』の共演者とは未だに連絡を取っていますか?

イザベル・ファーマン:ええ! (ジョン役の)ピーター・サースガードとは2022年のインディペンデント・スピリット賞でばったり会ったんですよ。何年も会っていないので、彼は最初は私が誰だかわからなくて、『えぇー、イザベル!?』って感じでした。彼は本当に素晴らしくて優しい人だから会えて嬉しかった。(ケイト役の)ヴェラ・ファーミガともたまに連絡を取り合っていますよ。

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