サステナブルなコスメを生活に取り入れるには?
環境問題が深刻化するなか、増えているのがサステナブルな美容アイテム“サステナブルコスメ”。できるだけ環境に配慮したコスメを選びたいという人が増えている一方で、「本当にこれで合っているのかな」と疑問を持ちながら選んでいる人も多いのでは。
そんなサステナブルコスメとの付き合い方について、“人にも地球にもやさしいコスメ”を表彰するアワードとして2019年に始まった「サステナブルコスメアワード」の審査員長を務める岸紅子さんにインタビュー。
岸さんが考えるサステナブルコスメとの付き合い方とともに、オススメの製品をご紹介。
自分が心地よく感じられるものを選んで
サステナブルなコスメについて精通している岸さんが、製品を選ぶときのポイントとしてアドバイスしてくれた内容は意外にもシンプル。それは、自分の好みや直感、心地よさに従うこと。
岸さんは、「コスメはいわば自分のために買うもの。しかも毎日触れるものなので、機能性や発色、香りなど譲れないところは人それぞれあると思います。だから肌に合わないけど…と無理に使うのではなく、完全に自分の好みでいいと思います」と説明。
サステナブルといえども、あくまで自分が心地よく感じられるものを選ぶのが大事だそうで、「自分が大好きだと思えるものをサステナブルコスメの中から見つけて欲しいですし、自分にフィットするものをとことん愛して欲しいなと思います」と明かした。
環境のことを考えて思い詰めすぎるのは禁物
環境のことを思うと、ときに自分に厳しくなりすぎたり、罪悪感に苛まれたりしてしまうもの。そんな人に向けて岸さんは、適度なゆるさを許す気持ちを持ち合わせることも大事だと明かす。
岸さんは、「人間は生きているだけでも環境に負荷をかけていますし、それをゼロにすることはできません。でも、その分環境から祝福されているとも言えますし、私たちの排出するものもまた環境に取り込まれて動的平衡を促しますし、私たちが暮らし方や関わり方で自然を増やすことに貢献することもできます。ひとつのことに思い詰めすぎて“エシカルうつ”のようになってしまっては本末転倒です。楽しく環境をより良く変えていきたいですよね」と話し、あくまで自分も心地よく過ごすためにサステナブルやオーガニックを選択するというベースを忘れないことが重要だと説明。
そしてサステナブルなコスメだからこそ感じられる、その魅力を存分に体感してほしいという。「サステナブルやオーガニックなコスメは、加工や精製がシンプルで自然に近い形でつくられたものが多いです。だから、香りも芳醇だし植物そのもののパワーが感じられるものが多い。コスメの中にある小さな自然を五感で感じてほしい」と岸さん。
自然から生まれたものだからこそのエネルギーに触れることが、毎日の何か楽しみや彩りに繋がると教えてくれた。
岸さんオススメのサステナブルなコスメ10選
たくさんのサステナブルコスメに触れてきた岸さんに、オススメのサステナブルコスメについて質問。カラーコスメからスキンケア、ヘアケア、デリケートゾーンケアまで10製品をご紹介。
【ファンデーション】
SAIRAI「ヴィーガニッシュ プロテクション&カバー クッションコンパクト」
サステナブルなベースメイクコスメとして岸さんがイチオシするのが、日本発のヴィーガンコスメブランドSAIRAIのヴィーガンクッションファンデ「ヴィーガニッシュ プロテクション&カバー クッションコンパクト」。
その魅力について岸さんは、「簡単にしっかりカバーできるのに、厚塗り感がなくて。肌への負担感も低いんです」と明かした。そんなSAIRAIのクッションファンデは、合成保存料や合成着色剤、シリコン、紫外線吸収剤、石油系界面活性剤などの合成成分と動物由来成分は不使用。
【カラーコスメ】
7NaNatural「カラースティック」
7NaNaturalの「カラースティック」は、「サステナブルコスメアワード2022」のインクルーシブデザイン部門で審査員賞を授賞した製品。岸さんは「チークにしたりリップにしたりどこにでもつけられるところがお気に入り」だそうで、普段持ち歩いていることも多いと明かした。
そんな「カラースティック」は唇や目元、頬などに使えるマルチ仕様のカラースティックで、天然由来成分100%でありながら高発色。ちなみに7NaNaturalは、コスメロスの問題にも着目し、使い切れるミニサイズ設計かつ使い終わった容器の回収・リサイクルまで取り組むなど「ひとと社会が抱える課題」の解決にも積極的に取り組んでいる。
【リップ】
ethique「カラーリップ バーム」
リップのオススメを聞いたところ、岸さんが挙げたのはethiqueの「カラーリップ バーム」。岸さんは、「固形シャンプーなどをいち早く出したethique。環境先進国のニュージーランドならではのブランドです」と説明。
「カラーリップ バーム」は、パッケージが紙でできているというサステナブルな製品でありながら、手に取りやすい価格であることもオススメのポイントだそう。「カラーリップ バーム」のパッケージは生分解性で、使い終わった後はリサイクルや家庭でコンポストが可能。カラータイプの「カラーリップ バーム」1種のほか、香りの異なる「リップ バーム」4種も販売中。
【ネイル】
Kia-Charlotta「ヴィーガン ネイルポリッシュ」
ドイツ発のヴィーガンネイルブランドであるKia-Charlottaのポリッシュ「ヴィーガン ネイルポリッシュ」。岸さんは、「ネイル製品はケミカル成分由来のものが多く、環境にやさしいものがなかなかないのですが、このポリッシュはヴィーガンで爪への負担も少ないんです」と高評価。さらに続けて、落ちにくいという魅力もあると説明。
ヴィーガンネイルはあまり持ちがよくない印象があるけれど、この製品は持続力も高いという。ちなみにKia-Charlottaは、流行色を追いながら原料の過剰消費を抑え、商品やボトルのロスを削減するために限定数生産としているブランド。ネイルポリッシュは、100%ヴィーガンであり、100%植物由来の溶剤を使用している。
【クレンジング】
みんなでみらいを「米ぬか酵素洗顔クレンジング+クレイ」
スキンケアの基礎である洗顔やクレンジングでも、サステナブルかつ機能性の高い製品が増加中。中でも岸さんのオススメは、みんなでみらいをの「米ぬか酵素洗顔クレンジング+クレイ」。
“毎日誰もが使い、そして使えば使うほど環境が改善するものを作り出すこと”をコンセプトとする同ブランドのこの製品について岸さんは、「米ぬかや小麦ふすまなどでつくられていて、地球環境に負荷がかかるものがゼロと言っても過言ではないほどで、本当にすごい製品なんです」と説明。
しかも驚きなのが、自然由来なのに排水溝までキレイにしてくれること。洗い流した排水は有益な微生物が分解してくれるため、排水管の汚れにもアプローチしてくれるのだという。
【美容液】
NEMOHAMO「ディープジェル」
岸さんがとにかく優秀な美容液だと絶賛するのが、植物の生命力を活かしたオーガニックコスメブランドNEMOHAMO「ディープジェル」。低分子化されたオタネニンジンエキスやタケノコ皮エキスなどの天然美容成分が角質層のすみずみまで浸透し、高分子のヒアルロン酸が肌表面に見えないヴェールを張り、相乗効果を発揮。贅沢なハリ・キメ肌へと導いてくれる。
使用されているオタネニンジンは、対馬で農薬不使用で育てられたもの。パッケージにもこだわりが詰まっていて、バイオマスPEを約40%使用したチューブ容器を採用。防腐剤不使用のコスメに対応した、衛生的に最後まで使えるエアレスポンプタイプで使いやすいところも、岸さんの推しポイントだそう。
【クリーム】
BI-SU「BI-SUフェイスクリーム」
天然アナツバメの巣を使用したサステナブルコスメブランドBI-SUの「BI-SUフェイスクリーム」。岸さんによるとこの製品は、ヒナが巣立った後には2度と使用されない100%天然のアナツバメの巣をアップサイクルした製品だという。
中華圏などで高級食材として愛されてきたアナツバメの巣には、ヒアルロン酸やコラーゲンをサポートするシアル酸やノーベル賞を受賞した美容成分のEGFが含まれている。そのため肌への嬉しい効果がたくさん期待できる製品となっていて、岸さんもかなり優秀だと太鼓判を押した。
【化粧水】
五島の椿「椿の葉 保湿水」
五島列島の椿をまるごと生かした自然由来のスキンケアブランドである五島の椿の「椿の葉 保湿水」。その特徴について岸さんは、「椿といえばこれまで種から採れるオイルのイメージが強かったですが、この製品では抗酸化物質を持つ椿の葉や、椿の花の酵母まであますことなく使っています」と説明。
すっと肌になじむ浸透力の高さと、しっとりうるおう使い心地も高評価。五島列島の大切な資源である「椿」を中心とした産業と雇用を創出し、島の持続的な発展に貢献するというブランドの理念も評価され、「サステナブルコスメアワード2022」では「椿の葉 保湿水」が地方創生部門の審査員賞を授賞している。
【ヘアケア】
Kruhi「シャンプー」「トリートメント」
サステナブルなヘアケア製品のオススメとして岸さんが挙げたのは、Kruhiの「ボタニカル石けんシャンプー」、「ボタニカルトリートメント」。この2製品は「サステナブルコスメアワード2022」にて、最高賞のGOLD賞を授賞したアイテム。
岸さんは「新たに材料を生み出してつくるのではなく、規格外のフルーツなどを買い取って農家を支援しながらものづくりをしています。しかも、香りが秀逸」と説明。Kruhiの製品は、鹿児島県南大隅町産の廃棄される規格外のフルーツをアップサイクル使用し、自然由来成分100%かつ石油由来成分等ケミカル不使用で、100%リサイクルアルミのボトルを採用。5日間で98.9%生分解される生分解性の高さにも脱帽。
さらに購入額の1%を環境保護活動団体に寄付するなど、徹底的に環境循環に配慮。もちろん機能性の高さも評価されていて、シャンプーでは「水」を一切使用せず、パッションフルーツ蒸留水を使用することで従来の石けんシャンプー特有のキシミを極限にまで抑えている。
【デリケートゾーンケア】
明日 わたしは柿の木にのぼる「フェミニン ウォッシュ」
今回、デリケートゾーンケア分野でもオススメの製品を教えてくれた岸さん。それが、柿にまつわる古来の知恵に着目した国産のデリケートゾーンケアブランドである、明日わたしは柿の木にのぼるの「フェミニンウォッシュ」。
岸さんによると同ブランドは、震災後に風評被害を受けていた柿の農家さんのサポートを行なってきたブランドだという。「フェミニン ウォッシュ」は、あんぽ柿の製造工程で廃棄される柿の皮から抽出した成分を配合した天然由来100%のシンプルな処方で、肌に負担をかけずにやさしく洗い流すことができる。
サステナブルコスメアワードの審査員長を務める岸紅子さんが教えてくれた、サステナブルなコスメとの付き合い方とオススメの製品。環境にもやさしく、肌や自分も気持ちよくなれる製品をぜひ手に取ってみて。
岸紅子さんプロフィール
・NPO法人日本ホリスティックビューティ協会代表理事
・環境省「つなげよう、支えよう森里川海」アンバサダー
・サスティナブルコスメアワード審査員長
自身や家族の闘病経験をもとに、2006年にNPOを設立。多数の美容・健康・医療関係者とともに女性の心と体のセルフケアの普及につとめ、資格検定や人材育成を行う。また、自らも自然治癒力や免疫力を引き出すためのウェルネス講座を幅広く実施。環境アクティビストとしても、ライフスタイルを通じた人にも地球にも優しいSDGsアクションを多く提言している。パーマカルチャーデザイナー、発酵食スペシャリスト、味噌ソムリエの一面も持つ。
NPO法人日本ホリスティックビューティ協会:http://h-beauty.info/
(フロントロウ編集部)