世界で「生理用品の無料化」が進む2つの理由
1. 月経用品は「エッセンシャル・アイテム」だから
月経は自然に起こる現象。そして生理用品は、贅沢品ではなく必需品。公共の施設や学校、職場では、トイレットペーパー、石鹸、水といったアイテムは安全衛生のために無料提供されているのだから、生理用品も同じように扱われるべきだという声が強まっている。
2. 生理の貧困でまともに生活ができない人がいるから
世界では5億人以上が生理の貧困に陥っているとされている。その結果生まれている問題のひとつが、月経中に学校を休んだり辞めたりして勉学へのアクセスが絶たれること。インドでは毎年200万人以上の少女が月経を理由に学校を辞めているという報告があり、アメリカでも10代の4人に1人が生理用品が入手できずに学校を休んだ経験があると答えており、世界的な問題となっている。
海外のトイレを調査! 無料の生理用品はどう提供されている?
外壁づけの容器に大量のナプキンとタンポン
タンポンや生理用品に課せられていた消費税を19%から7%へと引き下げることを2019年に決定したドイツでは、ポツダム大学やシュトゥットガルト大学など一部の大学が生理用品の無料配布を始めており、こちらは、フリードリヒ・シラー大学のトイレ内。個室の外の壁に設置された4段式の容器に、タンポンやナプキンが大量に入れられている。
個室内にロール式の生理用品
アメリカの大学を中心に設置が広がっているEgal。イギリスやルワンダの一部学校でも導入されているEgalはロール式でトイレットペーパーホルダーにも設置できるため、設置や補充がしやすいのが利点。“トイレットペーパーを持ち歩く人はいないのだから、生理用品を持ち歩く必要もない”をスローガンに掲げるEgalのCEOは、盗難については「トイレットペーパーと同じように、その製品が常にそこにあることを皆さんが分かってくだされば、盗まれることはない」とフロントロウ編集部の取材に語った。
シェア本棚のような形で生理用品を供給
バージニア州にて学生主導で設置された生理用品の提供ボックス。シェア図書館のような形で、地域の人たちが生理用品を寄付して、それを必要な人が持っていくシステム。バージニア州の公立学校では生理用品を提供するための資金援助はすでに導入されていたが、これまでは保健室に保管されているシステムだったため、5年生~12年生のトイレに自由に使える生理用品を設置するよう公立学校に求める法案が2022年に可決した。
企業努力でトイレに設置
英プレミアリーグでは、英国内のサッカースタジアムの女性用トイレで生理用品を無料で提供するキャンペーン“On The Ball”を展開中。もともと、セルティックFCのファン3人が始めたこの取り組み。ウワサを聞きつけたブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFCが初めて支援してから、リーグの多数のFCが次々と活動に賛同するようになった。
押せば出てくるディスペンサー
2016年にアメリカで初めて、すべての公立学校、刑務所、ホームレスシェルターでタンポンやナプキンを無料提供する市となったニューヨーク市。こちらの公衆トイレでは、左のレバーを操作するとナプキン、右のレバーを操作するとタンポンが無料で出てくるのだが、どのブランドのものかの記載もあった。
個人からの寄付制ボックス
こちらもニューヨーク市のトイレ。無料のディスペンサーはない代わりに、手洗いエリアに「ナプキン/タンポンを置いて行って、または持って行って」と描かれた箱が。コミュニティの協力によって、持つ者が提供をして、持たざる者が提供を受けるというシステムが作られていた。
日本では約700の自治体で無償提供中、制度利用のハードルは?
今回は、アメリカ、イギリス、ドイツを例に見たが、個室にロール式のものが設置されている場所もあれば、誰かが持ってきた箱が使われている場所もあった。共通するのは、必要な人が必要な時にお願いすることなく自由に持っていけるという形。
とはいえ、生理用品の無料提供が進む地域でも、まだまだ窓口提供は多く続いている。例えば、イギリスのチェーンスーパーであるモリソンズでは、“Package from Sandy(意味:サンディからの小包)”という制度を展開しており、窓口で「生理用品ください」または「サンディをください」と言うと、茶袋に入った月経用品がもらえる。
ここ日本では、内閣府によると、約700の自治体で生理用品の無料提供などの支援が行なわれている。提供方法は、トイレ内もあれば、保健室や、生活支援相談や男女共同参画センターなどの窓口がある。
ただ、制度を知っている人のうち、利用したことがある人は17.8%のみで、利用しない理由としては「申し出るのが恥ずかしかったから(8.5%)」、「人の目が気になるから(7.8%)」、「対面での受け取りが必要だったから(6.2%)」が挙げられた。やはり、“誰かにお願いする必要があること”がハードルになっているように見受けられる。このような調査結果を受けて、自治体では、トイレ内に月経用品を設置するほか、意思表示カードの提示や電子端末を通した意思表示で提供を受けられるシステムを導入するなど、システム改良の検討・導入が続けられているという。
※2023年4月14日に初掲載された記事です。