ニュー・ホープ・クラブが約3年半ぶりとなる来日公演を4月20日に東京・恵比寿 ザ・ガーデンホールにて開催。バンドの成長が詰まった一夜限りのライブの模様をレポート。(フロントロウ編集部)

未発表曲を含む新曲の数々を惜しみなく披露

 定刻を回り、ニュー・ホープ・クラブのメンバーであるリース・ビビィ、ブレイク・リチャードソン、ジョージ・スミスの3人がステージに姿を現すと、会場のファンたちが一斉にステージのほうへと早足で集まった。ステージの中央にブレイクが立ち、客席から見て左側にジョージ、右側にリースという並び。前回の来日時にはいなかったドラマーのマットがツアーメンバーとして3人を後ろから支えるが、3人の並びはあくまで横並び。誰か1人が前に出る主役ということはなく、こうして全員が横一列に並んでいるのも彼ららしい。

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 1曲目を飾ったのは、東京で撮影されたミュージックビデオも話題になった「Let Me Down Slow」。3年半ぶりとなる日本での公演をスタートさせるのにぴったりなアンセムで1曲目からシンガロングを生み出すと、2曲目には、昨年から次々にリリースしてきた一連の新曲の1つである「L.U.S.H.」を披露。新曲でもシンガロングが起きていたことには、日本のファンの愛情の大きさを感じたが、全員が演奏も披露したこの曲で強く感じたのは、3人が日本不在の間にバンドとしての自信をさらに深めていたということ。堂々と力強く、それでいて楽しそうに演奏し、歌っていた3人からは、新作に向けて自分たちで楽曲を書いているからこその誇りのような気迫が伝わってきた。

 ここで一度MCを挟み、日本のファンとの久しぶりの再会を喜んだ後で、バンドとしての人生が上向き(getting better)になっていることについて歌った「Getting Better」へ。その後は「Somebody That You Loved」、「Fixed」という、初期の楽曲が続けて披露されたのが、特に後者で感じたのが、マットというドラマーの存在感の大きさ。後ろからドラムで支えられているからこそなのか、3人は演奏中にもそれぞれの持ち場を歩き回り、スポットライトが当たらないところでジョージが指ハートをしてみせたり、ブレイクがジャケットを脱いでみせたりと、観客と自由気ままにコミュニケーションしながら、力強くパフォーマンスしていく。この曲の後で、3人はファンから日本国旗のフラッグを受け取り、マットが座るドラムの前で掲げてみせ、パワフルな「Worse」のパフォーマンスへと続いた。

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 一方で、演奏できて歌える3人の強みは自分たちだけでステージを成立させられるところでもある。続けて披露された、リースとジョージのハーモニーが美しかった「Don't Go Wasting Time」では、ブレイクが自らドラムを担当。3人といえば、様々なアーティストたちのカバー動画でも人気を集めたことで知られるが、この日の公演では、マイリー・サイラスの「Flowers」をカバー。今年、世界で最も聴かれた楽曲の1つであるこの曲を見事にニュー・ホープ・クラブ色に染め上げてみせた。

 アルバムのリリースを控えたライブでは、まだ見ぬ楽曲が聴ける可能性があるのも大きな魅力の1つだが、この日は、フロントロウ編集部が入手した公式のセットリストによれば「I Like Your Face」というタイトルの未発表曲がお披露目! ブレイクが現在、撮影中の新作映画『Midas Man(原題)』でポール・マッカートニーを演じているが、「I Like Your Face」はまさしく、バンドのアイドルでもあるザ・ビートルズからの影響が感じられるような、どこか懐かしさも感じる、3人の織りなすコーラスが印象的な1曲となっていた。

ニュー・ホープ・クラブが示したバンドとしての確かな成長

 この日は、曲中にもファンと目配せして愛を送るなど、ライブを通して日本のファンとの交流を楽しんでいた3人。続けて「Love Again」を歌う前には、ジョージがファンから花を受け取って、それをお祝いするかのように、リースがマイリーの「Flowers」の一節を即興で歌うという、さすがエンターテイナーと言わんばかりの場面も見られた。

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 そして、この日会場に最も美しい光景が訪れたのが、前週にリリースされたばかりだった最新シングル「Just Don't Know It Yet」が披露されたとき。“ライトで照らしてくれる?”という合図で、ファンがスマホのライトを点けてステージのほうを照らすと、ジョージ、ブレイク、リースが3人で中央のマイクに集まり、1本をシェアする形で、1番はジョージのギターに合わせながら残りの2人が歌い、2番はリースのギターに合わせて残りの2人が歌い、最後は3人がコーラスを披露するといった具合に、代わる代わる歌っていく。観客も静かに見守ったこのアコースティックのパフォーマンスには、この日一番とも言える大きな拍手が送られた。

 そして、ここからショーはクライマックスを迎え、一気にボルテージを上げていく。アップテンポな「Whatever」から、その勢いのままに、「ワン、ツー、スリー、フォー」の掛け声から畳みかけるように「Walk It Out」へと雪崩れ込んでいった3人。

画像2: ニュー・ホープ・クラブが示したバンドとしての確かな成長

 ここで、「次は最後の曲なんだ」と告げたジョージ。観客からの「ノー!」という声には、「もっといていい? 永遠に?」とお茶目に応えてみせる。リースがファンからサングラスを受け取って着けるなど、ギリギリまでファンとの交流を楽しんだあとで、本編を締め括ったのは冒頭からシンガロングが起きた「Permission」だった。

 一度ステージをはけて、リースのあざとくも可愛らしい「寂しかったよ」というMCと共にステージへと戻ってきた3人は、アンコールに「Call Me A Quitter」と「Know Me Too Well」をパフォーマンス。途中に挟まれたメンバー紹介では、リースがブレイクを、ブレイクがジョージを、ジョージがリースを紹介。最後はドラムの前に全員が集まり、思い切り演奏して大円団を迎えた。

画像3: ニュー・ホープ・クラブが示したバンドとしての確かな成長

 ニュー・ホープ・クラブがおよそ3年半ぶりとなった来日公演で示したのは、新人アーティストにとっては最悪のタイミングとも言える、デビュー直後に見舞われたパンデミックという思わぬ悲劇を乗り越え、3人がバンドとして大きく成長していたということ。セカンドアルバムをほとんど自分たちの手で書いてきたことで得られた自信は、間違いなく堂々としたパフォーマンスに現れていたし、より一層、ニューアルバムのリリースが楽しみになった。そして、3人も日本のファンも、再会を心から楽しみにしていたということ。何度も何度もファンと交流していた彼らから伝わってきたのは、バンドとファンの変わらない関係性だった。

<リリース情報>
ニュー・ホープ・クラブ
「Just Don't Know It Yet」
配信中

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(フロントロウ編集部)

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