『ウーマン・トーキング 私たちの選択(原題:『WOMEN TALKING』のプロデューサー兼キャストを務めるフランシス・マクドーマンド、出演者のクレア・フォイ、ルーニー・マーラらが映画について語る。(フロントロウ編集部)

連続レイプ事件を描く『ウーマン・トーキング 私たちの選択』

画像: 連続レイプ事件を描く『ウーマン・トーキング 私たちの選択』

 2010年、自給自足で生活するキリスト教一派の村で起きた連続レイプ事件。これまで女性たちはそれを「悪魔の仕業」「作り話」である、と男性たちによって否定されていたが、ある日それが実際に犯罪だったことが明らかになる。タイムリミットは男性たちが街へと出かけている2日間。緊迫感のなか、尊厳を奪われた彼女たちは自らの未来を懸けた話し合いを行う。

 原作は2018年に出版され、NEW YORK TIMESブックレビュー誌の年間最優秀書籍に選ばれたミリアム・トウズによる同名ベストセラー小説『WOMEN TALKING』。2005年から2009年にボリビアで起きた実際の事件をもとに描かれている。

 監督は、『死ぬまでにしたい10のこと』(03)などで女優として活躍しながら、2006年、『アウェイ・フロム・ハー君を想う』で監督、脚本家としてデビューし数々の賞を受賞したサラ・ポーリー。オスカー前哨戦でも脚色賞を数多く受賞した本作は、本年度のアカデミー賞®で作品賞、脚色賞の2部門にノミネート。脚色賞を受賞し、初のオスカーを獲得した。

フランシス・マクドーマンド、MeToo激化のなか原作を読み感じたこと

 本作のオプション権を獲得し、ブラッド・ピットの率いる映画制作会社PLAN Bへ話を持ち込み、映画化実現のきっかけを作ったプロデューサーであり、スカーフェイス・ヤンツ役を務めた俳優でもあるフランシス・マクドーマンド

 MeToo運動が激化しようとする頃に原作を読んだというフランシスは、「原作は、事が起きた『その後』とどう向き合っていくのかを描いており、ジェンダー間の政治闘争の『これから』について議論しようとしている物語だとわかり、『これはぜひ映画で見てみたい物語だ』と思いました」と、オプション権獲得までの心境を吐露。

 性暴力を扱った作品としては、ユーモアが多く取り入れられていることが特徴の本作。これは、サラ・ポーリー監督が最もこだわったところで、その理由は、原作小説を書いたミリアム・トウズにそう言われたからだと米Varietyで明かした。

 「ユーモアは私たちにとってとても重要でした。この本の映画化についてミリアムと初めて会ったとき、『この本を映画化する上で、あなたにとって最も重要なことがあるとすれば、それは何ですか』と尋ねました。すると彼女は、すぐに『笑い』と答えました。そうして、それが私たちにとって北極星となったわけです」

画像: フランシス・マクドーマンド、MeToo激化のなか原作を読み感じたこと

 このユーモアの部分はフランシスにとっても印象深いところのようで、今回のインタビューで、「疑念や不安を描くにとどまらず、未来の可能性を物語っており、ニュアンスに富んだ、ユーモラスかつ知的な議論を展開させている」と本作を評した。

 また、フランシスは本作の撮り方にもうならされたという。当初は、「至近距離から撮ったような素朴な作品」を想像していたそうなのだが、ポーリー監督の「そろそろ女性の物語をスケール感たっぷりに描いても良いはず。撮影も華麗に壮大にシネマティックに撮るべき」という考えのもと、壮大に撮ることが作品の要になったと明かした。そして最後には、「サラが監督として抱いていたビジョンを実現化することができて、我ながらとても嬉しいと思っています」と笑みをこぼした。

クレア・フォイ、「抑圧を経験したことがない、自覚さえない人であっても、共感できる」

 『ウーマン・トーキング 私たちの選択』で主演を務めたルーニー・マーラと、本作での演技が高く評価されて数々の映画賞にノミネートされて受賞したクレア・フォイ、複雑で多面的な女性キャラクターを演じ続けるジェシー・バックリーを交えた公式動画インタビューでは、ルーニーとクレアそれぞれが、映画の出来事が実話をベースにされていることについて、残念ながら「ショックを受けませんでした」と口をそろえた。それだけ、女性への性暴力は日常的に起きているからだ。

 クレアは納屋での話し合いシーンについて触れて、「女性たちは『闘うか』『赦すか』『去るか』という3つの選択肢について話し合います。瑣末(さまつ)なことのように感じられるかもしれないけれど、どれも大きな決断に値するし、そこに住む人々の運命がかかっています。だから長々と議論を重ねなければならないんです」とコメント。

 そして、「なぜこの映画が女性だけに向けられた映画ではないと言えるのか」という質問に対しては、本作を「抑圧されてきた人々の話」だと評し、映画の中で描かれる感情や思考について、「抑圧されてきた人々、あるいは抑圧を経験したことがない、自覚さえない人であっても、共感できるところがあると思います」と語った。

 またジェシーは、「映画で描かれる価値観は男女共に教育で教え込まれたことであり、村の上層部がその立場を保持できるように流布している教義でもあります。だから男女共に既存の教えを捨て去り、新たな価値観を学ばなければならないのです」と説明。これにクレアも同意し、「この作品は糾弾や報復を描くものではありません」と付け加えた。

画像: クレア・フォイ、「抑圧を経験したことがない、自覚さえない人であっても、共感できる」

 本年度アカデミー賞®脚色賞受賞、作品賞ノミネートを果たし、これまで世界の賞で56賞を受賞、151賞にノミネートされた『ウーマン・トーキング 私たちの選択』は、6月2日(金)より全国公開となる。(フロントロウ編集部)

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