オーディエンスと感情を共有することこそが「自分の仕事だと思っています」とフロントロウ編集部に語ってくれたラウヴだが、彼ほど、愛や無防備な感情を音楽で見事に表現して、多くのファンの心からの共感を呼んでいるアーティストはそういない。昨年に行なったインタビューに引き続いて、ラウヴらしく愛が多面的に表現された最新アルバム『All 4 Nothing』について、SUMMER SONIC 2023での来日を直前に控えたタイミングで改めてインタビューを行なった。(フロントロウ編集部)

ラウヴが語る『All 4 Nothing』で愛を表現する意義

画像: ディズニー&ピクサー最新作『マイ・エレメント』の劇中歌「Steal The Show」を担当したラウヴ。フロントロウ編集部ではラウヴに同映画の主題歌を担当するアーティストに抜擢された経緯についてもインタビューを行なったので、詳しくはこちらのインタビュー記事をチェックして。

ディズニー&ピクサー最新作『マイ・エレメント』の劇中歌「Steal The Show」を担当したラウヴ。フロントロウ編集部ではラウヴに同映画の主題歌を担当するアーティストに抜擢された経緯についてもインタビューを行なったので、詳しくはこちらのインタビュー記事をチェックして。

『マイ・エレメント』のピーター・ソーン監督は、ラウヴさんの「愛についてのありのままの感情を捉える」力を絶賛していました。その手腕は、多面的に愛が表現されている最新アルバム『All 4 Nothing』でも見事に発揮されていると思います。

それが友情であれ、恋愛であれ、セルフラブであれ、総じて、愛は常に僕にとってのインスピレーションになっています。ちょっとしたスイッチで悲しみと幸福が切り替わるのって、クールだと僕は思うんです。そういうものにとてもインスパイアされますし、これからもインスパイアされ続けたいと思っています。

「All 4 Nothing (I'm So In Love)」では恋愛の喜びを歌っている一方で、「Stranger」では恋に落ちることの恐怖を歌っているように、このアルバムでは恋愛の二つの側面についても触れていますね。

愛については今なお多くのことを学んでいる段階です。それも、概念としての愛ではなく、実体としての愛を学んでいるつもりです。僕は20代の多くの時期を、概念としての愛に魅了されていたのですが、その実体については恐ろしいとも思っていました。このアルバムには、頭の中に思い浮かべるような概念としての愛ではなく、「ねえ、(実体としての)愛ってこんな感じだよ! これが君の求めていたもの?」って問いかけるような瞬間が収められています。なので、このアルバムには愛を受け入れたり愛を楽しんだりする瞬間と、それと同時に、これは自分が求めていた愛ではないかもしれないと思いつつも、それを認識しようとする瞬間の両方が収められています。

一方で、「Kids Are Born Stars」は自分自身のインナーチャイルドに語りかけるという内容になっています。

今はインナーチャイルドとの対話を始めた段階という感じなのですが、「ちょっと待って。自分は8歳や12歳、16歳のときの自分と変わっていないじゃないか」っていうことに気がついたんです。当時の身体のまま、あらゆる経験が積み重なってきただけじゃないかって。それで、どうすれば自分らしい人生を生きて、本来の自分らしく感じられることができるだろうかっていうことを考えました。この曲を作ったのは、自分自身の一部との対話を始めるためでもありました。(幼い頃と)同じアリがちょっとだけ年をとって、ちょっとだけ奇妙になっただけのように感じる自分とのね(笑)。

アリ・レフというご自身の本名がタイトルになっている「Hey Ari」も同様にパーソナルな曲です。

これは、幸せを求める気持ちにインスパイアされた曲です。時々、ずっと幸せでいたいだとか、今よりも良い自分でありたいって思う時があるのですが、この曲はそういう気持ちに直面したときに、「本当に幸せかい?」って問いかけるような曲になっています。今、その答えは「イエス」ですよ。もちろん、「イエス」です。ここしばらくは幸せですから。この曲はパンデミック中の難しい時期に書いた曲で、あのときは大変だったんです。

アルバム『All 4 Nothing』で最もお気に入りの歌詞を挙げるとしたら、どの歌詞でしょう?

個人的には、「Hey Ari」の「なあ、アリ お前は幸せなのか?(Hey Ari, are you happy?)」がお気に入りです。自分の名前の「アリ」が登場するからではなく、僕が自分自身を気にかけているというところが気に入っています。それって、今この時代を生きるすべての人たちにとって大切なことだと思います。今は容易に、自分自身が幸せになれることではなく、他の人を幸せにすることに傾きがちですよね。そこから抜け出すのは時間のかかることで、人生のほとんど、あるいは人生を通じて取り組まなければいけないことだと思うのですが、僕はようやく殻を破って、自分を幸せにすることに取り掛かり始められたと思っています。そういう点で、この曲には本当に感謝しています。

今年に入ってからリリースされたシングル「Talking to Myself(Demo)」についても訊かせてください。“OCD(強迫性障害)アンセム”とも表現されていたこの曲は、『All 4 Nothing』のアウトテイクだそうですが、後からシングルとしてリリースすることにしたのはなぜでしょう?

出さないのはもったいない曲だなって思ったんです。リリースするべきなんじゃないかって。楽曲のサウンドに満足していなかったので、アルバムには入れていませんでした。ずっとデモとして考えていたので、デモなのだとすれば、アルバムには入らないなということで。そう思っていたのですが、コーラスの部分をずっと気に入っていたんです。心からの思いを歌っているように感じていました。というのも、僕は長い間OCD(強迫性障害)に悩まされていて、考えすぎたり、何もかもを疑問に思ったり、自分や周囲を疑ったりしてきたのですが、この楽曲ではそうしたことを忠実に描写しているので。リリースすることで、それを認めて、先へ進むことができるんじゃないかって思ったのです。

この曲のリリースは、『All 4 Nothing』に続く次なるプロジェクトへの足掛かりになりそうですか?

ある意味では、そうだと言えますね。次のプロジェクトは個人的にもワクワクしています。楽しさに満ちていて、僕が音楽に夢中になるきっかけとなったすべてのものが詰まったものになっています。すごく楽しみです。

8月4日には新曲「Love U Like That」をリリースしたラウヴ。プレスリリースで同曲について「この曲は、自分にとっても新しいフェーズの起点となるもので、めちゃくちゃ自信作です。曲の内容としては、それまで自分は興味ないと思っていたことに、実は興味があったということに気づいて、自分自身や周りの社会に批判されることを恐れず、勇気をもって前進するということを歌っています。これは新しい旅の始まり。胸を張ってスタートさせたいと思っています」とコメントを寄せた。

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