「男性は男性、女性は女性」ニーヨの発言が物議
シンガーのニーヨが日本時間8月6日に公開されたVladTVとのインタビューで、ジェンダー・アイデンティティについて語った。
「自分自身は、男性は男性、女性は女性という時代の人間なんです。ジェンダーは2つだけあって、それが自分が同意することだった。君が金魚と自認したいなら金魚と自認すればいい。それは僕の干渉すべき問題ではない。しかし、僕にその考えを強要するなら僕の問題となる。そして僕は君のことを金魚とは呼ばない」と語ったニーヨ。
「親は親の役割を忘れかけているような気がします。幼い男の子が、『パパ、僕は女の子になりたいんだ』って言いに来たとする。そうしたら、あなたはそれをただ受け入れるということですか? まだ5歳ですよ。5歳の男の子に一日中お菓子を食べさせたらそうなるだろう。5歳、6歳、12歳の子どもに人生を左右するような決断をさせるのは、いつからオッケーとなったんだ?」と続けた。
さらにニーヨは、インタビュアーが「脳や臓器に悪影響を及ぼすことを分かっていて、5~6歳の子どもたちに薬物療法をしている」「彼のアソコを切り落としても良いなんて」と陰謀論的なことを言うと、同意するようにうんうんと頭を縦に振っていた。
事実誤認や陰謀論が含まれた発言、本人が声明で謝罪
ニーヨの今回のインタビューには、多くの問題が含まれている。
まずニーヨが同意していた、“5~6歳の子どもに薬を与えている、性器を切り落としている”という発言。そもそも、思春期前で性差のない子どもに提供されるジェンダー移行は、名前や服装を変えるという社会的な移行のみ。“幼い子どもに薬や手術が提供されている”という思い込みはSNS上で広がる陰謀論で、2023年5月には、有名病院が幼児にジェンダー移行手術を提供しているという誤情報がSNSで拡散。名指しされたノースカロライナ大学病院やデューク大学医療センターらが手術は18歳以上に提供していると回答する騒動があった。
次に「金魚」発言。ジェンダー・アイデンティティの話になると、ニーヨのように揶揄するような比較が出ることがあるが、ジェンダー・アイデンティティの多様性は、世界医師会やアメリカ医師会、アメリカ小児科学会をはじめ主要な医療機関が認めていること。医学会も尊重されるべきだと認めていることに対して意味不明な比較をすることは、無知や無礼なだけ。またニーヨは、“考えを強要するな”と言っているが、別に社会はニーヨに男以外のジェンダーを自認しろと強要しているわけではない。他者がニーヨの黒人男性としてのアイデンティティをリスペクトするべきなように、他者のアイデンティティもリスペクトするべきだと求めているだけだ。
そして、「5歳の男の子に一日中お菓子を食べさせたらそうなるだろう」という発言は、“5歳の男の子にLGBTQ+のアイデンティティを推奨する教育をしていたらそうなる”という意味の発言のようだが、現代社会で推奨されているのは、「女の子なのに車が好きなんだね」「男の子なんだから泣かないの」「女の子みたいな走り方するね」「いつか良い夫を見つけて素晴らしいお嫁さんになるよ」といった押しつけや制限をやめよう、つまり、ニーヨのように子どものアイデンティティに対する思いをダメだと強要や強制しようとするのはやめようという話。
ジェンダー違和を抱える子どもを持つ親の多くは、子どもの年齢とその子に適した対応を模索している。『The Problem with ジョン・スチュワート』に出演した親たちは、ジェンダー違和についてまったく理解がなかったが、5歳にならない自分の子どもが“死にたい”と訴えてきた経験をそれぞれ明かした。我が子の最善を考えているそういった親たちは、今回のような無知や誤認にあふれた会話のなかで“親失格”と言われることが多く、ニーヨのように影響力のある著名人がその間違ったステレオタイプを拡散することの悪影響は大きい。
ニーヨは今回の発言に対する批判を受けて、インタビューが公開されてから24時間経たずして謝罪文を発表。以下が全文。
「熟考した結果、子育てとジェンダー・アイデンティティに関する私の発言で傷つけてしまった人がいたら心から謝ります。私は以前から、LGBTQI+コミュニティに対する愛とインクルーシブな考えを訴えてきました。だからこそ、私の発言がいかに無神経で不快なものと解釈されたかは理解しています。
ジェンダー・アイデンティティはニュアンスのあるものであり、今後この会話において理解のある発言ができるように、私はこの議題についてもっと学ぶつもりであることを正直に認めます。自分自身をもっとよく教育するつもりであることを認めることができる。つまるところ、私は愛とともに進む者で、すべての人の表現の自由と幸福の追求を支持します」。
※追記:この謝罪投稿の翌日、ニーヨは投稿を削除。謝罪は「広報のPCから」行なわれたことだったとして撤回し、再び同じような発言を繰り返した。