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主演のヴィッキー・クリープスが第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で最優秀演技賞を受賞し、マリー・クロイツァー監督の女性ならではの視点で、全く新しいエリザベート像を描いた『エリザベート 1878』をサクッとレビュー。(フロントロウ編集部)

【あらすじ】『エリザベート 1878』

 ハプスブルク帝国が最後の輝きを放っていた19世紀末、「シシィ」の相性で親しまれ、ヨーロッパ宮廷一の美貌と称されたオーストリア皇妃エリザベート。1877年に40歳の誕生日を迎え、世間のイメージを維持するために奮闘を続けながらも、厳格で形式的な公務にますます窮屈さを覚えていく。人生に対する情熱や知識への渇望、若き日のような刺激を求めて、イングランドやバイエルンを旅して旧友や元恋人を訪ねる。そして誇張された自身のイメージを捨て去りプライドを取り戻すべく、ある計画を思いつく。

『エリザベート 1878』のサク読みレビュー

 本作の原題『Corsage』はドイツ語で“コルセット”を意味する。社会の美の基準に体型を合わせるアイテムとして長年使われてきたコルセットは、女性の社会的・文化的な束縛を物理的に表現するシンボルとしても知られる。映画が舞台とする1870年代の女性たちは皆、社会が求める「女らしさ」のシンボルであった細いウェストの為に、身体の自由を制限してコルセットを着用していた。

画像1: 『エリザベート 1878』のサク読みレビュー

 今作の見どころは、女性であることの苦悩を抱え世間の期待と自身の欲望の板挟みになっていたエリザベートが、当時の平民の女性の寿命である40歳を迎え、家父長制社会でのステレオタイプに基づいた女性像を壊し、コルセットの呪縛から自らを開放していく様子が大胆かつ爽快に描かれている点。

画像2: 『エリザベート 1878』のサク読みレビュー

 これまで様々な映画やミュージカルなどで題材となってきたエリザベートだが、あまり語られてこなかった後年の様子が描かれていることや、中指を立てたり舌を出したりとロックでカッコいい現代的なエリザベート像が表現されている点も新しい。

画像3: 『エリザベート 1878』のサク読みレビュー

 栄華を極めた王朝の王妃であるエリザベートが抱えるのは、現代の私たちも共感できる普遍的な苦しみ。映画『バービー』の次に見るべき作品は、『エリザベート 1878』で間違いなし。

 『エリザベート 1878』は8月25日(金)より全国公開中。

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