いつ、どのくらい寝るか? 睡眠の「規則性」のインパクト
「睡眠の話をするときは、睡眠時間が最も注目されます。睡眠時間は健康的な睡眠の重要な要素ですが、それはひとつの要素に過ぎません。ここ数年、規則正しい睡眠も非常に重要であるというエビデンスが蓄積されつつありますが、この問題についての公的な指針はありません。そこで、全米睡眠財団は、睡眠規則に関する一般向けの指針を提供するために、このパネルを招集しました」
ハーバード大学の新聞ハーバード・ガゼットでそう明かしたのは、全米睡眠財団に報告を行なったパネル団のひとりである、ハーバード大学医学部ブリガム・ウィメンズ病院睡眠・概日障害科のマシュー・ウィーバー氏。
ウィーバー氏を含むパネルは4万を超える論文をもとに、1)睡眠の規則性は健康にとって重要か? 2)毎日規則正しいタイミングに睡眠することはパフォーマンスにとって重要か? 3)平日に睡眠を十分とれなかった場合、週末に余分に寝ることは健康にとって重要か? という3点を検証した。
ウィーバー氏によると、睡眠時間の不規則さは、肥満、メタボリックシンドロームのような代謝の悪化、心血管疾患、高血圧、さまざまな炎症マーカーの増加、痛みの増加といった身体的な不調との関連が認められたほか、気分の落ち込み、自尊心の低さ、幸福感の低さといった心の健康の悪化とも関連していたという。さらに、睡眠時間の不規則さは睡眠時間と質の悪化にもつながっていた。
睡眠時間の不規則さの許容範囲はどのくらい?
では、睡眠時間の規則性において許される“誤差”はどれほどなのだろうか?
ウィーバー氏は「論文によって睡眠の規則性の測り方が違う」ため明確には言えないとしつつ、「いくつかの論文で、入眠タイミングの標準偏差が1時間違うと、メタボリックシンドロームのリスクが23%、心血管リスクが18%上昇することが示されています」と明かした。
つまり1時間の誤差もあまり推奨しないということか。ただこれは短期的に見た場合で、「長期的に見ると、約70%の割合で夜9時から11時の間に就寝して、平均就寝時間は夜10時」がおすすめだとした。これならば、実現可能な範囲だろう。
不規則な睡眠は成績を下げる!? パフォーマンスにも大きく影響
規則正しい睡眠を確保できるかどうかは、パフォーマンスにも大きく影響してくるという。
「不規則な睡眠が増えるにつれて学業成績が悪化し、注意力(※視野の中にあるものを拾い上げ、環境にあるものに反応すること)も低下することがわかりました。認知能力、推論能力も低下し、単語の流暢さ、単語学習のような課題指向型テストの成績も低下しました」とウィーバー氏。
パネル団が目を通して論文のいくつかには、睡眠が不規則な大学生ほど成績が悪いというデータも存在したという。
週末に「睡眠負債」を解消できる? 週末の寝だめに健康効果はあるのか
平日に睡眠できなかった分を週末にキャッチアップできるのか?
「エビデンスによれば、私たちはもっと規則正しい睡眠をとるよう努力すべきです」とウィーバー氏が語るように、パネル団は睡眠の規則性を推奨しているため、週末の睡眠負債の解消はおすすめしていない。しかし、「睡眠不足は非常に蔓延しており、多くの人が平日に十分な睡眠を取れていないため、週末に睡眠時間を延ばすことが有益な場合もあるのかどうかを解析したいと考えました」と語り、その結果をこうシェアした。
「論文数は少ないですが、このエビデンスも非常に一貫しています。平日に睡眠不足の場合、週末の睡眠時間を1時間から2時間延長すると、心臓血管の健康状態が良くなり、炎症が少なくなり、代謝が改善しました。2時間を超えたら効果はないようです」
これは平日十分寝られていない人には朗報。とはいえ、やはり睡眠の規則性が最も効果があるそうなので、その点だけは間違えてはいけない。
ウィーバー氏らパネル団は、医学界がアドバイスを正確に行なえるよう、他の研究者には規則正しい睡眠時間について統一的な計測方法を開発することを提言している。