オリヴィア・ロドリゴに続いて、第65回グラミー賞で主要部門の最優秀新人賞を受賞し、同賞を12年ぶりにジャズ界にもたらしたサマラ・ジョイにインタビュー。『ハイスクール・ミュージカル』が大好きなディズニー・チャンネルっ子だったという幼少期のエピソードから、サマラらしいジャズ論、そして、日本で衝撃を受けたというチップスとの出会いまで、世界で最も注目すべき新人の1人であるサマラの素顔やアーティスト性が見える12のポイントにまとめた。(フロントロウ編集部)

5. グラミー賞受賞で“ほんのちょっぴり”だけジャズの門戸を広げる手助けをした

 2023年1月に開催された第65回グラミー賞で、前年の受賞者であるオリヴィア・ロドリゴから授与された主要部門の1つである最優秀新人賞と、最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞の2冠を受賞したサマラ。メジャーデビューから半年足らずでのグラミー賞受賞は音楽業界に衝撃を与えたが、とりわけ、全ジャンルを対象にした最優秀新人賞をジャズ・アーティストが受賞したのは12年ぶりという歴史的な快挙は、ジャズ界を大いに歓喜させた。

画像1: 5. グラミー賞受賞で“ほんのちょっぴり”だけジャズの門戸を広げる手助けをした

 サマラはフロントロウ編集部とのインタビューで、「グラミー賞はこれまでで最大のターニング・ポイントでした。ほとんど知られていなかった存在から、今では世界中に知れ渡るまでにキャリアに変化をもたらしてくれましたから」と振り返りながらも、“今回の受賞はジャズの門戸を若い人たちにもっと広げることにも繋がったと思います”とこちらが話を向けると、彼女からは「そういうことはあまり考えません」と、地に足の着いた回答が返ってきた。

 そう、彼女の魅力は、その謙虚で、あらゆる人たちをリスペクトする姿勢にもある。「少なくとも、私はそういう風には考えませんね。ジャズが広まる上では、ミュージシャンはもちろんですが、ラジオ局のプロモーターや、ジャーナリストの方々も同じくらい大切だと私は思っています」とサマラ。

画像2: 5. グラミー賞受賞で“ほんのちょっぴり”だけジャズの門戸を広げる手助けをした

 「なので、ただ私がグラミー賞を受賞したということだけでは、その手助けにはなっていないはずです。たしかに、“ほんのちょっぴり”だけ、ジャズの幅を広げたのかもしれませんが、私はあくまでそのうちの1人です。このジャンルを成長させている1人でいられることは嬉しく思っていますよ!」と、自分はあくまでもジャズの将来を担う1人に過ぎないと謙遜した。


6. グラミー賞ではあらゆるセレブに大興奮だった

 自身のグラミー賞受賞を冷静に分析したサマラだが、音楽業界のあらゆるビッグネームが集結した授賞式では、さすがに冷静を保ち続けることはできなかったよう。「たくさんのセレブに興奮していましたよ」と、当日の様子を振り返ってくれた。

「グラミー賞授賞式でビヨンセが目の前にいたとき、こう言えていたらよかったのに」というキャプションを添えて投稿したTikTok動画。

 “特に興奮したセレブは誰でしたか?”と訊くと、サマラはその一人一人を思い浮かべながら、こう返してきた。「ファレル・ウィリアムスにザ・ロック(※ドウェイン・ジョンソン)、カーディ・B、メアリー・J. ブライジ、ビヨンセ…ほとんど全員ですね(笑)」

画像: プレゼンターを務めた前年度の受賞者オリヴィア・ロドリゴから最優秀新人賞を贈られたサマラ・ジョイ。

プレゼンターを務めた前年度の受賞者オリヴィア・ロドリゴから最優秀新人賞を贈られたサマラ・ジョイ。


7. 『リンガー・アワイル』はキャリアのドキュメントのような作品

 2021年7月にセルフタイトルのファーストアルバムをリリースして、様々なステージに立ちながらパフォーマーとしての経験を積んでいったサマラ。2022年9月にリリースされ、第65回グラミー賞で最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞を受賞したセカンドアルバム『リンガー・アワイル』は、彼女がフロントロウ編集部に話してくれた言葉を引用すれば、「当時私が歩んでいたキャリアの地点をドキュメントにしたような作品」になっている。

 「ファーストアルバム(『サマラ・ジョイ』)は私が学校で学んだ楽曲たちを収録したような作品だったのですが、『リンガー・アワイル』については、当時ツアーをしていたこともあって、ステージで歌うための楽曲を選んだような作品になっています」と語るサマラが同作で目指したのは、ステージで披露して好評だった楽曲を音源としてリリースすることで、さらに幅広いオーディエンスに聴いてもらうこと。

 「クラブなどで披露したそれらの楽曲たちが好評をいただけたので、レコーディングして、私たちがライブで演奏していたものを多くの人たちにも聴いてもらいたいと思ったんです。ラブソングから失恋についての曲、幸せな曲まで、このアルバムでは感情のあらゆる側面を表現することを目指しました」


8. ステージの上だけでなく音源でもオーディエンスと繋がりたい

 これまでステージで好評を得てきたパフォーマンスを、音源としてもオーディエンスに届けたい。そんなサマラの思いは、11月1日にリリースされた日本特別編成盤『リンガー・アワイル・ロンガー・ジャパン・スペシャル・エディション』にも結実している。このアルバムは、オリジナル盤には収録されなかったバージョンなどが収録された1枚となっているのだが、日本特別編成盤として特別に収録された今年9月リリースのシングル「Tight」はその中でも、“パフォーマンスを音源で”という、サマラらしいオーディエンスへのアプローチが見て取れる1曲。

 「元々は(ライブの)セットリストのうちの1曲だったのですが、私の曲を聴いてくれている人たちの中には、これまでにリリースした2枚のアルバムというレコーディング音源を通してという形だけで聴いてくれている人たちもいるということに次第に気がつきました」と、「Tight」をシングルとしてリリースすることにした経緯について教えてくれたサマラ。

 オーディエンスと繋がることができるのは、必ずしもステージに立ったときだけではない。そのことに改めて気がついたサマラは、こう思ったのだという。「なので、この曲をリリースすることで、 『ねえ、私は(「Tight」のオリジナルを歌った)ベティ・カーターも聴いているんだよ!』って伝えたいと思ったんです」

 彼女は次のように続けた。「幅広いジャンルのシンガーを聴いていて、そのどれもが私を構成しているということを。それは楽曲のメッセージも同じで、パワフルで前向きなものもあれば、反対にセンチメンタルなものもあるし、幅広い感情を伝えたいと思っているということを、みんなに知ってもらいたいと思ったんです」

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