全米映画俳優組合のストライキの成果の一つとして、新契約では多様な髪質や肌質を持つパフォーマーたちに適切に対応することが求められる。

俳優組合が配給会社と結んだ「ヘアとメイク」に関する新契約の内容

 ハリウッドにおける数ヶ月に渡るストライキが終焉を迎え、全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)とハリウッドの映画スタジオとが合意した新たな契約の詳細が明らかになってきた。

 なかでも注目されているのは、ヘアとメイクアップに関する新しい規定。

 米Rolling Stoneによると、主要な出演者らは、撮影前にヘアメイクのニーズについて制作会社と相談できるようになるという。また、プロダクション側が出演者サイドのヘアメイクについての要求を満たせない場合には、俳優は外部に依頼することができ、最低2時間のスタイリングのための補償金を受けることができるとされている。

 なぜ、この規定は画期的だと受け入れられているのだろうか?

あまり語られてこなかった、ヘアメイクの差別

 髪質や肌質は人種によって異なり、適切なケアやスタイリングはそれぞれ異なる。

 しかし、白人中心の映像業界では、白人の髪質や肌質に慣れたヘアメイクアップアーティストが配属されていることが多く、とくに髪質や肌質が大きく異なる黒人俳優たちは、不慣れなクルーが台無しにした髪やメイクを自分で直す必要が合ったり、使うべきではないプロダクトを使われて髪に大きなダメージが残ったりと、不適切な扱いを受けてきた。

  今回の規定はそんな“ヘアメイクの差別”を是正するためのもので、俳優やスタイリストからは称賛されている。

 SAG-AFTRA全国執行副社長のリンダ・パウエル氏は、「ヘアスタイリストが頭を触った瞬間に、その人が髪の毛の扱いを知っているかどうかが分かる」とRolling Stoneに語り、多様な髪質に対してスタイリストの持つ技術にばらつきがあることを自身の経験から指摘した。

画像: あまり語られてこなかった、ヘアメイクの差別

 SAG-AFTRAと映画テレビ製作者協会 (AMPTP) は、 あらゆる人種や民族の俳優と仕事をする資格のあるヘアスタイリストやメイクアップアーティストの人数を十分に確保できるよう、IATSE(国際舞台演劇・映画従事者同盟)と話し合いを進める予定となっている。

 さらに、あらゆる髪質や肌の色あいに対応できるよう、メイクアップとヘアの専門家のトレーニングに投資をするという。

 ちなみに、今回の規定が適用されるのはキャストのみ。組合としてはエキストラたちにも同等のサポートを求めたものの、今回はスタジオ側が拒否したため、次回の契約交渉ではぜひ実現したいと組合は考えているという。

 SAG-AFTRA交渉委員会兼理事のトワンダ・アンダードゥ氏は、「多くの有色人種の俳優が差別されているので、差別的な事に対処したり意見を聞いてもらえないのが、普通のことだと思っていました。しかし、今では私たちの声がしっかり届いていると感じています」と、新契約の内容がマイノリティの立場を尊重する内容へと変化してきていることに希望を感じているとRolling Stoneに語った。

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