“どこにも属せない”少女が辿るカフカ的な旅──『テイク・ミー・サムウェア・ナイス』が描く、夏と居場所の物語
地図のどこにもない“素敵な場所”を、ひとりの少女が探しに行く──それが『テイク・ミー・サムウェア・ナイス』だ。
オランダとボスニアを舞台にしたこの青春ロードムービーは、境界線の中で揺れる若者たちの感情を繊細に描き出す。監督はボスニア出身のエナ・センディヤレヴィッチ。自身のルーツと真っ向から向き合ったこの初長編作品で、彼女はロッテルダム国際映画祭のタイガーアワード特別賞を手にした。
アルマは“母国”ボスニアへと旅立つが、その地はもはや異国であり、彼女を受け入れてはくれない。ぶっきらぼうな従兄、居場所のないアパート、見知らぬ風景。たったひとりで旅する彼女が出会うのは、謎めいた青年デニス。そし...