『ボラット』シリーズで知られるサシャ・バロン・コーエンが、マーベルのドラマ『アイアンハート』で悪魔メフィストを演じることになった際の舞台裏を明かした。出演オファーを受けた際、制作陣が切り出したのは、ユダヤ系であるサシャへのある配慮だったという。(フロントロウ編集部)
「悪魔とユダヤ人」の結びつきを気にかけた制作陣
現地時間10月21日、サシャ・バロン・コーエンはニューヨークの文化施設92NY(92nd Street Y)で開催された、ジョシュ・ホロウィッツのポッドキャスト番組『Happy Sad Confused(原題)』の公開収録に登場した。自身が初めて長編映画の監督を務めた主演作『Ali G: Who Iz I?(原題)』のプロモーションで各地を回っているサシャは、2025年にディズニープラスで配信された『アイアンハート』への出演が決まった際のことを振り返った。なお、『Ali G: Who Iz I?』はアメリカで10月23日に劇場公開される。
サシャはまず、「出演オファーを受けた際のミーティングは素晴らしいものでした」と切り出し、制作・監督チームのほぼ全員が黒人だったと説明。そのうえで、制作陣から次のように言われたと明かした。
「メフィスト役をあなたにオファーしたいと思っています。ただ、歴史的にユダヤ人が悪魔と結びつけられてきたという否定的な背景があることは承知しています。このオファーを侮辱的だと感じないか、確認しておきたいのです」
サシャはこの言葉を「驚くほど思いやりがあり、共感に満ちた言葉でした」と表現し、自身は「ええ、大丈夫ですよ」と答えたという。
「理解してもらえた」と感じた瞬間
ユダヤ人を角や悪魔のような特徴と結びつけるステレオタイプは、何世紀も前の聖書の誤訳に由来するという説があり、反ユダヤ主義的な偏見を広める一因となってきた。米Varietyは、中世以来、ユダヤ人が強大で威圧的な集団として描かれてきたという米団体ブランダイス・センターの指摘も紹介している。
サシャにとって、制作陣があらかじめこうした歴史的背景に触れてくれたことには、特別な意味があったようだ。
サシャは「ユダヤ人として、時には自分たちの存在が理解されていないと感じることがあります。人々が私たちに共感してくれない、私たちも苦しんでいるのだと理解してもらえないと感じるんです」と語り、「だからこそ、黒人の制作・監督チームがあれほど共感を示してくれたことは、自分たちの存在を認め、理解してもらえたと感じられる瞬間でした。素晴らしい経験でした」と続けた。
『アイアンハート』はチナカ・ホッジがクリエイターを務め、『ブラックパンサー』のライアン・クーグラー監督とジンジ・クーグラーが製作総指揮に名を連ねている。なお、マーベル・スタジオは同誌のコメント要請にすぐには応じなかったという。
最終話で明かされたメフィストの正体
メフィストは、悪魔メフィストフェレスに着想を得たキャラクター。マーベル・コミックでは、ヒーローたちを欺き、魂と引き換えに願いをかなえる取引を持ちかける存在として知られる。
『アイアンハート』では最終話でメフィストが登場し、ドミニク・ソーン演じる主人公リリ・ウィリアムズが、亡くなった親友ナタリーを生き返らせるために、サシャ演じるメフィストと取引を交わす展開が描かれた。メフィストの登場は、ディズニープラス初のマーベルドラマ『ワンダヴィジョン』の頃からファンの間で予想されてきただけに、約4年越しに実現した待望のMCU初登場となった。
『ボラット』シリーズでアカデミー賞脚色賞に2度ノミネートされ、『シカゴ7裁判』で助演男優賞にもノミネートされたサシャ。悪魔役の出演オファーをめぐる制作陣との対話は、作品の見方にも新たな視点を与えるエピソードとなった。



















