プリンスの未発表音源だけを集めたアルバム『Timeless』が、8月28日にCDとデジタル配信でリリースされた。没後10年にあたる今年、彼が生前に遺した「Vault(保管庫)」から発掘された全10曲が並ぶ。(フロントロウ編集部)
プリンスが57歳で急逝したのは2016年4月21日のこと。それから10年の節目に届いた『Timeless』は、これまで一度も世に出ていない音源だけで構成されている。特徴的なのは選曲の幅で、10曲がそれぞれ別の年に録音されており、収録範囲は1977年から2016年までのおよそ40年間に及ぶ。キャリアのあらゆる時代を1枚で通した作品は、彼の作品としては初めてになる。

1曲目は、契約を取るために録った音だった
冒頭の「I Am You」は1977年の録音だ。当時19歳のプリンスは、レコード契約を勝ち取るためにミネアポリスのサウンド80スタジオでデモ制作に明け暮れていた。つまりこの曲は、まだ誰でもなかった頃の彼が、自分を売り込むために鳴らしていた音ということになる。レーベルの発表によると、瑞々しいファンク・ナンバーだという。
そこから「Tick Tick Bang」(1981年)、「Heaven」(1985年)、「I Wonder」(1989年)と年代が進み、90年代の「With This Tear」「Stone」、2000年代の「Calabama」「The Guilty Ones」、2012年の「Bestest Friend」へと続く。1曲ごとに10年近く飛ぶ構成ではなく、10年刻みでもない。ただ、並べてみると空白の年がほとんどない。それだけ彼が絶えず録り続けていたという証拠でもある。
最後の1曲は、亡くなる7週間前のステージ
締めくくりの「How Come You Don’t Call Me Anymore? (Live)」は、2016年3月4日、オークランドのオラクル・アリーナで行なわれた〈Piano & A Microphone 2016〉のライヴ録音だ。この公演のおよそ7週間後に、プリンスはこの世を去っている。
この曲はグラミー賞17冠のアリシア・キーズがカバーしたことでも知られる。ピアノ1台とマイク1本という最小限の編成で臨んだ晩年のツアーは、あらゆる楽器を自分で弾きこなしてきた人物が最後に選んだ形でもあった。19歳のデモで幕を開け、その最終公演で幕を閉じるという構成は、意図的に組まれたものだろう。
「金庫」に何が眠っていたのか
プリンスの「Vault」は、彼が生前から膨大な未発表音源を保管していたことで知られる。今回発掘されたのはそのごく一部にすぎない。
彼はすべての楽器を自分で演奏するマルチ・プレイヤーであり、セルフ・プロデュースまでこなした。ツアーのチケット購入者にアルバムを無料で配るという当時としては前例のない手法を自ら企画・実現し、その後の音楽プロモーションのやり方を根本から変えた人物でもある。グラミー賞は7度受賞、100万枚以上を売り上げたプラチナ・アルバムは12作、トップ40入りしたシングルは30曲を数える。
日本盤CDは高品質のBlu-spec CD2仕様で、初回生産限定の紙ジャケット。ブックレットには歌詞・対訳に加えて解説と考察が収められている(SICP-31866/3,300円税込)。輸入盤国内仕様のアナログ・レコードは9月16日発売予定で、完全生産限定盤の黒盤・日本語帯付き(SIJP-240/5,500円税込)となる。

















