MCUに登場した初めてのトランスジェンダー
現在公開中の映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』に、トム・ホランド演じるピーター・パーカー(スパイダーマン)やゼンデイヤ演じるMJの同級生として出演しているザック・バラク。
トランスジェンダーであるザックは現在23歳で、本作で大作映画デビューを果たした新人俳優。俳優のほか、シンガーやコメディアンとしても活躍する彼は、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)映画に出演した初のトランスジェンダーとなった。
MCUに新たな風を吹き込んだ華々しいデビューを飾ったザックは、トランスジェンダーだからこそスパイダーマンのように正体を隠すヒーローと自分が重なることがあると米Varietyのインタビューで語った。
「アメコミに詳しいわけではないけど、幼い頃から読んできたコミックは、僕にとって大切なものなんだ。しかもアメコミのストーリーには、トランスジェンダーにとってすごく本質的につながる部分がある。とくに本当の正体を隠しているキャラクターにはね」と話したザックは、「例えば、(『スパイダーマン:ホームカミング』では)ピーター・パーカーがティーンエイジャーでいることと、ヒーローとしての人生のバランスが描かれた」「それってすごくトランスジェンダーっぽいし、僕がまさに日常的に感じていること。とくに男性寄りのトランスジェンダーとして、周りに馴染むために、時より本当の気持ちとは違うことをしなきゃいけないのかとプレッシャーを感じることがある。自分の本能と闘わなきゃいけないんだ」と、説明した。
そのうえで、「だからこそ、この映画に出演できたことはものすごく意味のあることで、これが誰かにも意味のあることになってほしい」と、初のトランスジェンダーとしてMCUに起用された喜びを語った。
撮影現場にて、ネッド役ジェイコブ・バタロンと一緒に撮った写真。
LGBTQ+起用に遅れを取るMCU
ハリウッドのエンタメ業界では、近年ますますLGBTQ+のキャラクターや俳優を起用する流れが高まっているが、MCUでは過去21作までLGBTQ+の俳優やキャラクターはひとりも登場したことがなかった。
一方、マーベルの競合他社であるDCコミックスは、LGBTQ+のキャラクターを積極的に起用することで有名。ドラマ『SUPERGIRL/スーパーガール』ではトランスジェンダーのヒーローが出演し、『バットウーマン』ではレズビアンのヒーローが主役を務めた。
こうした動きがあるなかで、社会現象を巻き起こすほどの影響力を持つMCUが遅れを取っている。
そんな懸念を受けて、2019年4月に公開された映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』で、MCUで初めてLGBTQ+のキャラクターが登場。クリス・エヴァンスが演じたキャプテン・アメリカが主催する自助グループに参加した男性として、ジョー・ルッソ監督がゲイのキャラクターを演じた。
その流れに続き、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』ではトランスジェンダーのザックがスクリーンに登場。
少しずつではあるもののLGBTQ+を起用するようになってきたMCUについて、主人公を演じたトムは、「キャラクターの未来について僕は知らないし、管轄外だから話すことはできないけど、これから数年後のマーベルでは、色々な人にスポットライトが当たることは分かっている。今の世の中はストレートの白人男性だけというほど単純じゃない。そこで終わらないし、これからの映画でタイプの違う人を描く必要がある」と、米Gay Timesに多様化するMCUの未来を語った。(フロントロウ編集部)