主催者側に「交換条件」を提示
米現地時間8月26日に開催された2019年のMTVビデオ・ミュージック・アワード(通称VMA)で、LGBTQ+アンセムとも呼ばれるヒット曲「ユー・二ード・トゥ・カーム・ダウン(You Need to Calm Down)」のMVが、同アワードで最も栄誉ある賞の『最優秀ビデオ賞』を受賞したシンガーのテイラー・スウィフト。
この日、アワードの目玉であるオープニングパフォーマンスを任せられたテイラーは、最新曲「ラヴァー」を初披露したほか、「ユー・二―ド・トゥ・カーム・ダウン」のパフォーマンスでは、MVに登場したビヨンセやレディー・ガガ、アデルといったポップアーティストに扮したドラァグクイーンらを引き連れたカラフルでポップな演出で観客や視聴者を興奮の渦に巻き込んだ。
しかし、この歴史的とも称されるテイラーのパフォーマンスが実現した背景には、VMA主催者側との間に駆け引きがあったことが判明。じつは、テイラーは、自分がステージに立つ条件として、あることを提示していた。
テイラーが「さもなくば、パフォーマンスは行なわない」と、断固として譲らなかった“交換条件”とは、もしも自分が受賞した場合には、今回一緒にステージに立ったMVの出演者たちにも自分と同じく受賞トロフィーを贈呈して欲しいというもの。
ラッパーのカーディ・BのそっくりさんとしてMVに登場したドラァグクイーンのトリニティ・K・ボネットは、VMA中のバックステージで撮影した動画の中で、「みんなに知らせておきたいんだけど、テイラーは、彼女がもし賞を獲ったら、私たち出演者みんなにもムーンマン(※1)をもらえるように主催者側に交渉してくれたの。ちゃんと、それぞれがトロフィーをもらえないなら、パフォーマンスはしないって言い張ってね」と、テイラーの粋な計らいを告白。「自分の名前が刻まれた最優秀ビデオ賞のトロフィーを自宅に飾れるなんて…」と感無量の様子で語っていた。
※1 「ムーンマン」と呼ばれる宇宙飛行士のキャラクターを模したデザインのVMAの伝統的なトロフィーのこと。
VMAのバックステージにて。テイラーに肩を組まれているのがトリニティ。
受賞スピーチでも、平等法(※2)への支持を改めて表明し、LGBTQ+コミュニティを法的に支援しようと呼びかけたほか、「ユー・二―ド・トゥ・カーム・ダウン」のMVのプロデュースを手がけた親友でエンターテイナーのトドリック・ホールにマイクを譲り、LGBTQ+を公言している彼の立場から、悩める子供たちに声を上げるよう、メッセージを贈る機会を作っていたテイラー。
※2 性的指向と性自認に基づく差別禁止を連邦法に明示することで、雇用や住宅、公共施設の使用など、すべての人がその生活を平等に送れるよう保障するもの。
彼女が主催者側に飲ませた“粋な交換条件”は、「ユー・二―ド・トゥ・カーム・ダウン」のMVの受賞は、決して自分1人の力では成し得なかったという出演者たちへの感謝の気持ち、そして、みんなが平等に扱われるべきだという姿勢の表れだったよう。(フロントロウ編集部)